Updated: December 28th, 2024
東京大学佐藤淳研究室 + 佐藤淳構造設計事務所
● Overview
● Simple Optimization / Simple Form Finding
● Structural Optimization Algorithm
● Similarity between Form Optimization and Deep Learning
● Sakura Dimples: Local Optimization Applicable to Lunar / Martian Base Camp
● Energy Distribution as an Objective Function
● Contraction Method in Buckling Eigenvalue Equation
● Timber Joinery for Free Aggregated Form
● 1/f fluctuation / 1D Spectrum Analysis
● 2D Power Spectrum in Creating Komorebi Naturalness
● Geometry to Provide Natural Forms / Flexible Angle Kigumi Joinery
● Geometry to Provide Natural Forms / Free 3D Metal Form
● Geometry to Provide Natural Forms / Fuzzy Node Algorithm
● Multi-objective Optimization
● Super Lightweight Paper & Fabrics / Quick Establishment
● Lightweight and Ductile Structure: Little by little, learning Great Nature
● Super Lightweight Structures
● Membrane Tensegrity / Omission Technique of Engineering
● Lattice3 = Lattice×Lattice×Lattice
● Free Form Using Excavated Ground
● Structural Analysis Model Tune-up
● 3D Tensegrity / Pop-up Tectonics
● International Seminar & Workshop
● Lectures
森に棲む月に棲む /「こもれび」を生む透過性ある構造形態
Jun Sato
Jun Sato Structural Engineers Co., Ltd.
Associate Professor, University of Tokyo
http://junsato.k.u-tokyo.ac.jp/
佐藤 淳 / 佐藤淳構造設計事務所, 東京大学准教授
Architectural structures composed with slender elements let us notice that transparent structures have potential to serve as environmental filters to create Komorebi space.
Using multi-objective optimization, those structures prevent death in the event of collapse while providing natural space.
か細い材で形成された透過性ある構造形態は環境を制御する「フィルター」としての役割を持ち、「こもれび」のようなナチュラルな空間を生み出すものとなることができます。
力学と光環境を同時に最適化する「多目的最適化」でそんな形態が生み出されます。
いまこの「多目的最適化」の時代が訪れています。
そして「壊れても死なない構造」を生み出すこともできそうです。
Komorebi : Sunlight comes through leaves in the woods.
Sazanami : Ocean ripple, containing acoustics.
Seseragi : River stream, containing acoustics, cool breeze, humidity, smell of moss, and Komorebi.
日本には素敵な言葉があります。
「こもれび」「さざなみ」「せせらぎ」
「せせらぎ」は、音だけでなく光、温度、気流、湿気が織りなす空間です。
We should compose a morphogenetic operation for those targets through these practices:
Dynamical Operations / Geometrical Operations / Workshop Scale Experiments
Using these operations, we would be able to develop more morphogenetic forms based on geometry, materials, dynamics, craftsmanship, site situations, and energy consumption.
Engineering is a technique of omission. We still confront unidentified phenomena. We never have enough time to try all the calculations we desire. We try to suppose a simplified model with fewer calculations and figure out if the structure is feasible. This aspect has to be acknowledged by society.
そんな「透明/半透明」な構造形態を生み出すために、
「力学形態の制御」「幾何学形態の制御」「ワークショップスケールでの実践」
を通して形態生成の「設計法」を構築することを目指します。
この手法を用いて、幾何学、材料、力学、職人技、現場環境、消費エネルギー、に基づく形態を生み出すことができます。
エンジニアリングは「省略の技」です。
未だ解明されない現象がある中で、限られた時間と費用の中で、決断しているのだと社会から認識される必要があります。
Visitor Center in Vijversburg
ファイバースブルグビジターセンター
Architect: Junya Ishigami, Marieke Kums / studio MAKS
Structural advisor: Jun Sato
Engineering: ABT
Published: MARK #54, 2015 / Shinkenchiku, September 2017
A curved glass wall structure with a thickness of 1cm is provided by manipulating the buckling phenomenon and load distribution.
曲面状のガラス壁の構造。
座屈強度と荷重配分を最適化して厚さ1cmでできています。
Buckling strength is manipulated by curvature. (Photo: Jun Sato)
Glass walls work as shear walls against wind load.
薄板に曲率を与えると座屈に強くなることを活用しています。
ガラス壁は風による水平力にも抵抗します。
(No Image)
Junya Ishigami’s sketch
http://www.designboom.com/architecture/junya-ishigami-associates-maks-park-groot-vijversburg/
3D buckling analysis on curved thin wall
Radius – Buckling Strength Diagram
薄板に曲率を与えると、何倍も強くすることができます。
The brainstorming with Junya Ishigami takes 5 to 8 hours on each day.
Through detailed thinking against each phenomenon, a new structural idea sometimes comes up.
石上さんと案を練るときは、5〜8時間ものブレーンストーミングを何度も繰り返します。
そうして現象を丁寧に分析しているうちに、アイデアが生まれるときがあります。
Glass walls and beams construction (Photo: Marieke Kums)
Screenshot of form optimization software to manipulate load distribution
The load distribution is manipulated by arrangement of beams.
荷重配分は、梁の配置によってコントロールできます。
「壁の曲率」「梁の配置」という2つの「幾何学パラメーター」だけを調整して最適化しました。
Construction of curved glass walls (Photo: Marieke Kums)
KAIT広場
Architect: Junya Ishigami
Structure: Yasutaka Konishi + Jun Sato + Kazuyuki Ohara
Contractor: Kajima Co., Ltd.
Steel Roof Construction: Shiraishi Steel Co., Ltd.
Steel Wall Construction: Nichinan Steel Co., Ltd.
2-way catenary thin steel sheet with a thickness of 12mm is spans 50×80m while sagging 4m.
Allowing a bit of compression, the concaved shape on the corners could become curved in low curvature which provides higher space and simple manufacturing.
12mmの鋼板で80×50mの懸垂屋根ができました。
ゆがんだ四辺形のエッジから2方向曲率を持って垂れ下がります。
Rain water as well as sunlight comes in from the openings.
トップライトにはガラスがないので雨も落ちてきます。
縁のほうでは床面が滑らかにせり上がっています。
床伏図/屋根伏図
屋根の縁部3mには座屈止めのリブを並べています。
短辺50mの軸組図
中央で4m垂れています。
屋根は強烈に壁を引張ります。
基礎を大きく作りアースアンカーで抑え込みます。
鋼板サンドイッチパネルの壁の足元はアンカーボルトを締めると引き戻せるようにしてあります。
鋼板サンドイッチパネルの壁の外観
屋根にはトップライトが散在しています。
The catenary shape was determined using the Co-rotation method,
which is one of the nonlinear analysis algorithms.
四辺形の懸垂曲面は四隅でかなり円錐形に絞る必要があると分かりました。
それでは天井が低くなるのと加工しにくいので曲率を緩めます。
すると圧縮が発生してしまうことが分かりました。
青:引張/赤:圧縮
懸垂する引張方向に直交に圧縮が発生します。
冬季に収縮するときは隅部でこの圧縮が増大して厳しくなります。
Buckling mode in summer
In summer, the compression stress increases in the middle of the edges.
夏季の応力状態に対する座屈モード
夏季には四辺の中央で圧縮が増大するのが厳しくなります。
Steel roof construction
Around 200 sheets of steel are assembled and full-penetrated.
鋼板を敷き並べ終わった屋根/竣工時
壁の足元を抑え込む大量のアンカーボルト/鋼板サンドイッチ壁の溶接
屋根の縁部のリブ/トップライトの開口補強の溶接
開口補強/屋根の部分的な膨らみを矯正したアブりの跡
開口の縁はフラットバーで補強しました。
スカラップがr=35mmなのに習って入隅はr=50mmとしました。
ガスバーナーでアブる方法は高橋さんに教えていただいたそうです。
ジャッキダウン完了
力学的最適化のアルゴリズム
Architect: Kengo Kuma
Structure: Jun Sato
川棚温泉交流センター
建築家:隈 研吾
構造:佐藤 淳
Multifaceted form optimized by adjusted position of nodes.
川棚温泉交流センター (建築家:隈研吾) の山並みのような多面体
「力学的形状最適化」の典型的な対象の一つが多面体です。
多面体の凸凹の具合を最適化します。
Development of algorithm for form finding under several load scenarios:
Gravity
Gravity + Seismic load X
Gravity + Seismic load Y
Gravity + Wind load X
Gravity + Wind load Y
Self-weight + Snow
The structural performances as the objective functions:
Safety ratio due to material strength
Safety ratio due to buckling phenomenon
Distribution of energy absorption
This software has automatic execution option which will substitute for Macro or Plug-in of some specific 3D modeling software.
「重力のみ」「重力+X方向地震」「重力+Y方向地震」など「複数の荷重パターン」に対して形態を最適化するアルゴリズムの提案です。
安全率、座屈強度、吸収エネルギーなどが力学上の「目的関数(評価指標)」となります。
自動実行機能を実装すると、形状操作を別のソフトウェアに依存して、そのソフトウェアから実行することによって「マクロ」や「プラグイン」に見えるものとして使用することもできます。
Polyhedral form for Community Centre in Kawatana Onsen, Architect: Kengo Kuma
Safety ratio color chart is displayed while morphing the shape by mouse.
まず形状操作を画面上で「マウスによる手動操作」でできる「手動形態解析」のソフトウェアを作ってみました。
許容応力度に対する「安全率(検定比)」を指標にして、各荷重パターンから算出される検定比のうち、材毎に最大値のみを表示します。全ての部材で検定比が 1.0 を超えない形状を見つけることが目標になります。重力や地震、積雪、風など複数の荷重を「総合評価」して形状を最適化することに相当します。
Any geometrical parameters from any shape, such as Free Surface, Stacked Clusters, Branched Tree, Randomly Located Columns, can be selected to transform the shape.
「自由曲面」「積層」「樹状」「多段スラブ」「林立する柱」などどのような形状からも幾何学的パラメーターを選んで適用できます。
Polyhedral mesh for Naoshima Pavilion, Kagawa, 2015, Architect: Sou Fujimoto
直島パビリオン (建築家:藤本壮介) の溶接金網による透明感ある多面体
Free surface for House of Pease HOPE, Copenhagen, Architect: Junya Ishigami
最適化の典型的な対象の一つに自由曲面もあります。
Twisted ribbon for Cloud Arch, Sydney, 2014~, Architect: Junya Ishigami
Geometrical Parameters: winding shape, twisting angle
リボンが空中に舞うようなタワーです。
「3次元曲線」とリボンの「ひねり角」を幾何学的パラメーターにして最適化しました。
パラメーターを少なく限定するのが腕の見せどころです。
Form Optimization Software Component: Hogan + Rhinoceros + Grasshopper
Rhinoceros + Grasshopper + Python + Hogan によるソフトウェアコンポーネント
形状操作を別のソフトウェアに依存してプラグインのように使用することもできます。
特定のソフトウェアのプラグインとしてプログラミングしなくてよい構成法として提案しています。
Stacking free curved wall, Architect: Sou Fujimoto
Genus of topology is also optimized in this case
アメーバ形ボリュームの積層形態 (建築家:藤本壮介)
Free level floors for House NA, Architect: Sou Fujimoto
House NA (建築家:藤本壮介) の多段スラブ
Branched tree, Architect: Sou Fujimoto
Randomly located columns for Extreme Nature, Architect: Junya Ishigami
樹状形態 (建築家:藤本壮介)
Extreme Nature の林立する柱 (建築家:石上純也)
最適化の自動化
形態解析(最適化)を自動化することを考えます。
多面体の節点のZ座標(高さ)だけを操作して探索するツールを作ってみました。
→
共役勾配法による自動化のサンプルモデル
節点のZ座標のみをパラメーターにして自動最適化する例
「共役勾配法」による4回の収束計算で安全率を 1.532 → 0.695 に下げられます。
数式の分からない関数の勾配を求めるため「感度解析」には時間がかかります。
動かせる節点を1つに限定すると1次元の探索になります。
安全率fのグラフを下へ下へたどる探索になります。
動かせる接点を2つにすると2次元の曲面を下ってゆく探索になります。
Gradient Method
Single dimension / 2 dimensions
勾配法の探索イメージ
1次元 / 2次元
最も急な方向へ下ってゆくのが「最急降下法」です。
曲面を楕円体の一部と見なすと早く解を見つけられ「共役勾配法」といいます。
「遺伝的アルゴリズム(GA)」「進化的アルゴリズム/生成的設計法(Evolutionary Algorithm / Generative Design)」「ESO法」「Force Density法」などの手法が提案されています。
「共役勾配法」の計算方法を理解するのは骨が折れますがプログラムはたったこれだけです。→ ソースコード
形態解析と機械学習
「形態解析」と「機械学習」は似ています。
「最適解」を「AI」が探すという意味ではありません。
こんな方程式があったとします。
αx +βy = z
「形態解析」は最適な x, y を探す問題です。
「Deep Learning」は最適な α, β を探す問題です。
なので似たアルゴリズムで答えを見つけられそうです。
「形態解析」は「入力値」の最適化です。
αx +βy = z
式の係数 α, β は与えられています。
そのとき目標の z に近くなる x, y を探します。
例:4x + 2y = 1
zが「1に近くなる」「1を下回る」などの目標を設定します。
ここでは z=1 に近くなる x, y を探すとします。
x=0.10, y=0.10 を代入してみると 4×0.10 + 2×0.10 = 0.6
x=0.15, y=0.05 を代入してみると 4×0.15 + 2×0.05 = 0.7
となって少し良くなりました。
これを繰り返してより良い解に近づけます。
x, y を「座標」と考えれば形状を最適化したことになります。
「Deep Learning」は「関数」の最適化です。
αx +βy = z
式の係数 α, β が分かりません。
ですが入力 x, y の値に対する答え z が何例か分かっています。
「教師データ」と呼ばれます。
そうなるような係数 α, β を探す、つまり適した関数を見つけます。
例:x=1, y=4 を与えると z=2
x=2, y=2 を与えると z=1
となると分かっているとします。
そうなるように α, β を調整したいということです。
α=0.8, β=0.1 としてみると
0.8×1 + 0.1×4 = 1.2
0.8×2 + 0.1×2 = 1.8
α=0.1, β=0.5 としてみると
0.1×1 + 0.5×4 = 2.1
0.1×2 + 0.5×2 = 1.2
となってだいぶ良くなりました。
「学習」したということです。
これに事象をあてはめます。
x=1 は「爬虫類」、x=2 は「哺乳類」としてみます。
y は「脚の数」としてみます。
x=1, y=4 は「爬虫類」で「脚が4本」なので z=2 は「ワニ」を表すとします。
x=2, y=2 は「哺乳類」で「脚が2本」なので z=1 は「ゴリラ」を表すとします。
これらを判別する式は 0.1x + 0.5y だと見つかりました。
それでは x=2, y=3(哺乳類で脚が3本)という生物を判別してみます。
0.1×2 + 0.5×3 = 1.7
z=1.7 となって z=2 に近いので「ワニ」に近いと判別されました。
「ワニ度」が1.7と表現してもいいですしどちらかと問われればこのAIは「ワニ」だと答えるということです。
Deep Learning の基本プログラムはたったこれだけです。→ ソースコード
色を判別させるプログラムを作ってみました。
学習データ(教師データ)
・Cyan ● {0, 255, 255} → 1 つまり f(x,y,z) = f(0,255,255) ={1 0 0 0}
・Yellow ● {255, 255, 0} → 2 つまり f(x,y,z) = f(255,255,0) ={0 1 0 0}
・Magenta ● {255, 0, 255} → 3 つまり f(x,y,z) = f(255,0,255) ={0 0 1 0}
・Orange ● {255, 100, 0} → 4 つまり f(x,y,z) = f(255,100,0) ={0 0 0 1}
となる関数fを見つけておきます。
その上で、
・● {180, 140, 40} がどれに近いか判定してみました。
Yellow との一致度62%,Orangeとの一致度27%と算出されました。
Windows プログラミングの第1歩
「ウィンドウを開きマウスで線を引く」
これができればあとはプログラムを増殖してゆくのは簡単です。
「形態解析」「Deep Learning」「スペクトル解析」などいずれも基本プログラムは短いものです。
ライブラリなど使わず自作してみるとどんどん増殖して使えます。
Global Optimization 全体操作 : Optimization of global shape.
Local Optimization 局所操作 : Optimization of local shape using drapes, wrinkle, dimples, or grooves.
薄板に凹凸の「Dimple=えくぼ」を設けると強度を増すことができます。
「ディンプル」「葉脈状の溝」「カーテン状のヒダ」「紙のシワ」などが局所最適化に使えます。
Dimple / Groove / Wrinkle to increase buckling strength of thin plate
Water Pavilion, World Expo in Aichi, 2005, Architect: Naomi Sakuragi + Students, University of Tokyo
Pulp Mold Screen, Tokyo University of Science, 20
COCOON, Seminar in Stanford University, 2016
COCOON, Seminar in Stanford University, 2016
A catenary arch or a dome is globally optimized due to gravity.
In addition, wrinkles and dimples can be attached as local optimization.
滑らかなヴォールトやドームは全体操作による最適化された形状と捕らえられます。
これを「えくぼ」や「うねり」を与える局所操作によってさらに性能を上げられます。
局所操作は「フラクタル」のように幾重にも繰り返すことができます。
フラクタルと同様に最適化によってもナチュラルな模様が生み出されそうです。
Floral dimples / Crescent dimples
花柄模様と月型模様のエンボス加工を施した銅板
大学院生が「花柄模様」が効果が高いことを見つけました。
降伏先行型,座屈先行型を模様でコントロールすることもできます。
Buckling strength is proportional to the number of dimples
花柄ディンプルの密度を増すと比例的に座屈強度が増します。
「曲げ剛性 = 面外曲げ」を硬く「軸剛性 = 面内伸縮」を柔らかくできることを大学院生が見つけました。
これは多面体の展開構造に相応しい特性です。
Scattering floral dimples onto stressful area.
応力の大きな部分に花柄を散りばめます。
Sakura dimples pressed on a copper sheet.
Double-slumped glass sheet with floral dimples.
型押した銅板 / ガラスドームに散りばめられた花柄模様
「ダブルスランピング」によりディンプルを散りばめたガラスドームを作るのに成功しました。
第1スランピングで花柄を加工し、第2スランピングでドーム型にします。
応力の大きな部分に花柄を散りばめる「局所最適化」によってドーム形状に自由度が増します。
桜が咲き誇るようなナチュラルさを持つ自由曲面のドームがデザインできるようになりそうです。
これが「月面基地」の多面体にも使えると大学院生が気づきました。
月面基地/火星基地
Detailed page → Quick Setup Lunar Base Camp on the Pole / in the Pit
T期:2021年度
JAXA宇宙探査ハブ共同研究「外皮と床が即時展開されるベースキャンプ(構造物)とその内部緑化空間の構築」
東京大学 + プランツラボラトリー株式会社 + 株式会社矢嶋 + 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
U期:2022〜2025年度
国土交通省+文部科学省+内閣府「宇宙建設革新プロジェクト」
「月の極域および縦孔での滞在開始用ベースキャンプの最少形態と展開着床機構」
東京大学 + 九州大学 + 竹中工務店 + 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
STARDUST PROGRAMのひとつとして月/火星基地の開発が始まりました。
まだ公式な実施プロジェクトではないものの構造躯体の開発に着手しています。
これまで研究してきた構造のアイデアの多くが生かされます。
・外皮と高床骨組の「同時展開」
・金属薄板の「花柄ディンプル」と「曲線折り」による多面体の展開構造
・「非平坦地」への着床機構
・ケーブルリフトを吊る「張弦構造」
・「ハサミムシ」の後翅を模したソーラーパネル
Lunar Pole Setup → Movie
The minimal composition of a base camp on the moon or Mars.
Permanent sunny region on the lunar pole is suitable for photovoltaics.
「極域=南極」へのセットアップ
Lava Tube Setup
Lava tube is protected from temperature gaps, radiations, and meteorites.
Habitat Module 3D printed, Scale=1:100 / Aluminum mock up, Scale=1:10
月/火星基地 滞在モジュール
輸送機に運ばれたコンテナからのリリース / 空気圧で展開しながら非平坦地に下ろすスライドレールと脚部
といった機構も研究開発しています。
滞在モジュールの格納状態 / 滞在モジュールのリリース → Movie
Deployment test of the body of Habitat Module
Embedded floor deploys simultaneously when the pillow-shaped envelope deploys by the air.
スケール 1:5 のモックアップの展開試験を実施できました。
「滞在モジュール」は内気圧により「外皮+内蔵高床+脚部」が「同時に即時に」展開します。
アルミ製の外皮は「花柄ディンプル」を散りばめ「曲線折り」で折り畳みます。
The Sakura dimples enable the multifaceted thin plate to snap-through readily.
浅い四角錘型のモックアップによる飛び移り試験
「花柄ディンプル」によって「面外剛性=曲げ剛性」は大きく、「面内剛性=軸剛性」は小さくなります。
これは展開構造に必要な「飛び移り現象」を起こしやすくできることに大学院生が気付きました。
Double fold using curved crease
Curved crease prevents the fatigue failure.
「曲線折り」による2回曲げ
金属薄板を折り畳むとき金属疲労を避けるには「曲線折り」によって緩い曲率で折ればよいと判りました。
1次曲げの直径を板厚の10倍、2次曲げを100倍とすると伸び性能10%以上のアルミニウム合金では破断しません。
内部で同時展開する高床 / 非平坦地への接地脚
「飛び移り」しにくい部分を確認できる部分多面体を特定し実大モックアップを製作しました。
枕型外皮の展開試験 → Movie / 曲線折りに追従するヒンジ
部分実大モックアップを内気圧で膨らませることに成功しました。
まだ花柄ディンプルを施していないものの概ねひしゃげず展開しました。
「曲線折り」に追従できる丁番も開発しました。
Dense vegetation in the cramped spaces
Provide oxygen (O2) and food, absorb carbon dioxide (CO2).
狭隘部は「高密度緑化」して酸素,CO2,食料の循環を図ります。
The overhang module comprises a tensioning structure to cantilever from the cliff.
The cable lift is suspended from the 15m cantilever.
オーバーハングモジュールのモックアップ Scale=1:10
クレーターや縦孔へ下りるには15m程度オーバーハングさせればよさそうです。
オーバーハングモジュールのユニットも実寸で製作してみました。
The deployable fan panel, referring to the hind wings of earwigs,
was developed by Saito K. et al., Kyushu University.
ソーラーパネルは九州大学の斉藤一哉先生により「ハサミムシ」の後翅を模した展開機構が開発されています。
ハサミムシの後翅は昆虫で最大の15倍という展開率を誇るそうです。
部分実大モックアップ全体像
「安全率」の他に「吸収エネルギー」の分布を目的関数にすることもできます。
Energy absorption diagram for New Hakushima Station, 2015, Architect : Kazuhiro Kojima / CAt
白島新駅 (建築家:小嶋一浩+赤松佳珠子)
地震時に吸収したエネルギーを可視化した「エネルギー団子図」
「応答解析」により地震時の振動をシミュレーションし各材が吸収したエネルギーを「団子」で描きます。
このエネルギー団子の分布を最適化する試みです。
滑らかなアーチは「足元」と左右の「肩部」に損傷が発生します。
4ヶ所が損傷するのは不安定度の高い崩壊形です。
「うねり」を施すと損傷部を「頂部」に寄せられて3ヒンジ状態で安定度の高い崩壊形となります。
滑らかなドームは全般的に損傷して不安程度の高い崩壊形となります。
損傷部を足元と頂部に寄せられると安定度の高い崩壊形にできます。
花柄を散りばめる手段も有効かもしれません。
振動の過程で観察される固有周期の変動
損傷の具合を「固有周期」を観察することで検出することを大学院生が提案しました。
固有周期が長くなる形状はエネルギー団子の分布が良くないことになります。
応答解析の4000回ほどの計算で毎度固有周期を計算するのは膨大な計算量ですが
そんなことができる時代になりました。
座屈固有値問題の縮約
When we could know buckling strength of each element, we can manipulate buckling phenomenon more precisely and compose the structure with slim elements.
Contraction method seems applicable to extract buckling strength of each element.
立体骨組全体の座屈固有値問題を「縮約」して「個材の座屈強度」を検出することを試みます。
これを「目的関数」にして形状を最適化することもできます。
複数の材から成る構造体の終局強度解析を行う際、「塑性(終局)関節」の設定のためにも「個材の座屈強度」が必要となります。
Buckling analysis for 3D frame
Buckling strength distribution of dimpled wall calculated by contraction method
Published in JIA paper, 2017
座屈モードが全体的な変形となる立体骨組/「ディンプル(えくぼ)」を設けた壁の座屈強度分布
有限要素法(FEM)において節点がN個ある全体骨組の座屈固有値問題は、次のように表される。
[KE] {Ui} = λi [KG] {Ui} ← 6N行の方程式
ここで、[KE]:弾性剛性マトリクス
[KG]:幾何学的剛性マトリクス
λi:座屈固有値
{Ui}:座屈固有ベクトル(座屈モード)
ガウスの消去法と同様の手順で k 番目の行と列を消去する縮約を次のように表現する。
各剛性マトリクスの両側に同じ係数行列 [C],[D]を掛けることを考える。
これを用いて各剛性マトリクス [KE]、[KG] に施すと次のようになる。
すると固有値問題は、
[KE'] {Ui'} = λi' [KG'] {Ui'} ← 6N - 1 行の方程式
となる。これを次々繰り返して、個材に関連する部分だけを残す。
最終的に残る剛性マトリクスを[KE'']、幾何剛性マトリクスを[KE''] と書くと、
[KE''] {Ui''} = λi'' [KG''] {Ui''} ← 線材では12行の方程式
として個材の固有値を求めることが可能であることが示唆されました。
この固有値が個材の座屈強度を表すことが期待されます。
単純な門型骨組の実験では妥当性が示されました。
最も荷重を多くした試験体の試験状況,荷重変形曲線
本手法の妥当性の検証
実験から2つの柱の強度はグレーの範囲にあると分かる。
これに対し、本手法で計算される強度は青丸なので、他よりも実験値をよく表している。
形状最適化への応用例
斜め格子壁の要素の太さを最適化する
計画:東京大学小渕祐介研究室
東南アジアではココナッツの繊維が大量に余っています。
小渕祐介研究室でこれを丸めて弾にして屋根に敷き詰めようというアイデアが生まれました。
垂れたネットに重量を載せると、か細い柱が座屈に強いと解釈できることに気付きました。
こうして考えると、ネットがたるんでいるときは、重さがあったほうが安定なように見えます。
プロトタイプによる解析モデル/非線形解析による収束計算の様子
いつまでも不安定に近い構造なので、検証には非線形解析が必要です。
研究員の古市渉平により、Newton Raphson 法の一種である Co-rotation 法を改良した
解析アルゴリズムのプログラムが稼働し、解くことができました。
ココナッツの繊維の弾は屋根の向こうの見えないところへエアバズーカで撃ち込まれます。
撃ち込む角度はヘッドホンの音が知らせてくれるそうです。
Day 6 (final day) : Target weight / Deformation
6日目(最終日)の目標荷重 / 変形
● : この日の初期値(前日の現場の変形計測値)
● : この日の変形予測
● : この日の変形結果
どこへどの量の繊維を打ち込むべきか特定するアルゴリズムも構築できました。
打ち込まれた弾が目標地点に着弾したかを計測するのでなく、1日の作業が終わったら柱の変形を計測します。
すると予測との違いで重さの分布の誤差が分かります。
これをもとに次の日に撃ち込む目標位置を補正します。
これも「逐次最適化」です。
Awarded: Golden Lion
Management: The Salama bint Hamdan Al Nahyan Foundation
Organizer: Ministry of Culture and Knowledge Development
Curator: Kenichi Teramoto, Wael Al Awar
Structural Advisor: Jun Sato
Navigation System Developer: Yusuke Obuchi
主催:The Salama bint Hamdan Al Nahyan Foundation
協力 : Ministry of Culture and Knowledge Development
キュレーター:寺本健一, Wael Al Awar
ナビゲーションシステム:東京大学小渕祐介研究室
In UAE, pure water is extracted from seawater, and a huge amount of salt is left.
Magnesium can be extracted from that salt, and it is useful as an ingredient of cement.
Coral-shaped pieces with a dimension of 40cm, made of magnesium cement, are stacked up to 2.7m.
UAE National pavilion in Arsenale
海岸に流れ着いたサンゴのように、マグネシウムセメント製の「サンゴ」を2.7mに積層しました。
Leftover salt / Salted surface of the coral unit
表面に塩を結晶させています。
アラブ首長国連邦UAEでは海水から真水を精製しています。
大量に余る塩からマグネシウムを採取できます。
このマグネシウムでセメントを作ることができます。
Stacking test uo tp 2.3m / Loading test / Casting test using ground as a mold
To provide around 2500 pieces of the free-shaped brick in 2 months,
Jun Sato recommended using the ground as a mould.
The grooves could be drawn quickly on the ground, and the brick became coral-shaped.
2.3mに積層したモックアップ / 積層状態の圧縮試験 / サンゴモジュールの製作
「マグネシウムセメント」で自由形状のモジュールを作って積層できないかと寺本さんが考えていました。
2000〜6000個ものモジュールを2ヶ月ほどで作らなければなりません。
土に溝を掘りセメントを流し込んで固めた「サンゴ」モジュールなら作れると考えました。
Navigation tools
To manipulate the huge number of free-shaped pieces, navigation tools could be developed by Yusuke Obuchi.
A positioning device on the arm tells us the area to put the piece,
and the pointer tells us the location of each piece.
積層位置を指示するナビゲーションシステム / 積層した状態の位置情報の取得
小渕祐介先生の研究室でナビゲーションシステムが構築されました。
サンゴをどこに積めばよいか腕につけた青いランプが点きます。
果たしてどこに積まれたかスキャンします。
サンゴの形と方向まで知る必要はないと考えます。
サンゴ1つに1点でよいので棒の先の赤玉でサンゴの中央をチョンと触るだけです。
Simplified structural analysis model for updating optimization
Through the loading test, the structural performance could be related to just the density of the wall,
so the shape and orientation of each piece do not need to be detected.
The overall shape was stacked layer by layer, day by day.
When a layer is stacked, a simplified structural analysis model can be updated using the coordinates
announced from the pointer, and the form of the upper unbuilt part can be optimized again.
最適化ツール
サンゴの位置から積まれた「密度」が分かります。
構造解析モデルはサンゴの密度が分かれば解けると考えます。
これなら素早く解析モデルが構築できます。
6層に分けて1層できる毎に構造解析します。
目標の密度とは違う部分ができるのでそこから上の形状を最適化して補正します。
大きな「誤差」を受容する作り方における最適化手段として「逐次最適化」の提案になりました。
Architect: Kengo Kuma
Structure: Jun Sato
Published: MARK #54
建築家:隈研吾
構造:佐藤淳構造設計事務所
Shaggy free-form timber structure provides an inner space filled with Komorebi – sunlight through leaves.
Timber joinery for 4 timbers to cross could be developed, referring to Japanese traditional joinery.
これは、日本の伝統的な「木組」の技術を応用して、細かな材がモシャモシャに組まれた構造です。
これが完成したときにこんな透過性ある構造デザインが光や視線をコントロールし「こもれび」のような内部空間を生み出す「フィルター」としても働きそうだと感じました。
Sunny Hills in Aoyama
Timbers are interlocked using unique Kigumi – timber joints without metal fixings.
A mesh structure can serve as a filter of light, sight, air, heat, sound, water and ecosystem.
「地獄組み」を応用して生まれた「木組」の構造
Discussion with Kengo Kuma is always just a brief moment of 10 minutes.
It is necessary to develop an innovative imagination from his few words such as “scattering tiny particles…”
隈さんとの打ち合わせは極端に短くて10分ぐらい。「小さな材」がランダムに「パラパラっと」集積したイメージ、という言葉を頼りに、木組をやってみようと思いつき、イメージを膨らませていきます。
Chidori / Jigoku Grid developed by traditional carpenters in Hida district.
「地獄組み」「千鳥格子」などと呼ばれる平面格子。
かつて飛騨の大工によって考案されました。
硬い材が交互に組まれている不思議な格子。
Crossing timbers / Processed timbers / 2D projection of overlapping timbers
We should develop a suitable way of projection onto a 2D display.
木材の刻み方は「透過表現」「寸法線の立体表現」など2次元での表現に工夫が必要です。
それができればBIMにも活用できそうです。
Structural analysis model / Detailed buckling analysis model
解析モデル全体図/部分モデルによる座屈解析
6cmの材で3層を支持するのは一筋縄ではいきません。
ヒノキで硬めのE110を使用します。
座屈解析は凹んだ部分は細い材という詳細なモデルで解く必要がありました。
Component Growth Process
The timbers are continuous, but the global form can be understood as stacked voxels geometrically.
木材は繋がっていますが全体形の幾何学的な構成は単なる「ボクセル形式」です。
増殖は単純にvoxelのように並べてゆくだけで、接合にパラメーターはありません。
Random Operation
The simple voxel system enables the quick provision of random global shapes.
It is helpful in the Genetic Algorithm of the optimization.
遺伝的アルゴリズムのようにランダムに全体形を生成する手法にも適用しやすいシステムです。
Target Global Shape
Topological Operation
This system also enables quick feedback from the topological optimization.
The thickness of the structure provides a gradual pattern under a condition of constant porosity.
フィードバックも容易で Topological Optimization も適用しやすい。
空隙率の均一な構造が、ボリュームの違いによってグラデーションを生み出します。
1/f ゆらぎ/1次元スペクトル解析
Architect: Kazumi Kudo + Hiroshi Horiba / Coelacanth K&H
Structure: Jun Sato
Geometry Advisor: Takashi Chiba
千葉商科大学カフェテリア
建築家:工藤和美+堀場弘/シーラカンスK&H
アドバイザー:千葉貴史/建築ピボット
The 1/f fluctuation (pink noise) makes music or visual patterns to be comfortable and natural.
For this roof, thin LVL beams are assembled in a 1/f fluctuation pattern of spacings.
木目や音楽を心地よいと感じるのは1/fゆらぎの効果だといいます。
薄っぺらいLVL梁を斜め格子状に並べ、そのピッチに「1/f ゆらぎ」のリズムを持たせることが千葉氏より提案されました。
自然の風合いが現れ、トップライトからは木漏れ日のような光が差し込みます。
Roof pattern 屋根伏図
Section 長手の軸組図
LVL屋根を支持する柱は φ141.3x30 で柱頭ピン接合。
鉄骨ラーメン構造部分の柱は H-125x125x6.5x9 柱頭剛接合。
硬さのバランスを取って偏心率を抑える。
Safety ratio diagram 安全率の色表示図
The location of columns was optimized due to the pattern of beams.
ルーバー状のLVL梁のピッチを並べた数列を波形と見なして 1/f ゆらぎの模様を描く。
この梁配置に対して柱の位置を手動形態解析により最適化する。
Original wave Fluctuation
Progression of spacings
Assume the number of data = N.
波のデータが N 個あるとする。(N は偶数とするのがよい)
am = a0, a1, a2,… aN-1 (m = 0〜N-1)
Assume the interval of data = Δt, total period Td results in as follows.
データ取得の間隔を Δt とすると、継続時間 Td は、
Td = N Δt
Assume Ck (k = 0〜N-1) as the factors of Complex Fourier Transform, Ck and the amplitudes Xk are expressed as follows.
複素フーリエ係数を Ck (k = 0〜N-1)とすると、フーリエ変換の式は、
とおくと、
Power Spectrum by Fourier Transform, logarithm scale
Horizontal axis : f = frequensy of wave
“Power” can be understood similar as “amplitude.“
When the logarithm scale graph with the horizontal axis “ f ” shows a distribution of -1 gradient, it indicates 1/f distribution.
梁ピッチの数列を波形と見なし、その「ゆらぎ」部分を取り出した波形をフーリエ変換して、パワースペクトル密度(振幅のようなもの)の分布を描きます。横軸を周波数fとした対数グラフで描くと図のように-1の傾きを持つのでfの-1乗つまり1/fの形に分布しています。もっとばらつきの少ない数列にすることもできます。
Spectrum analysis is expected to be useful for manipulating environmental factors. There might be some other formulae or parameters existent which are related to environment elements.
「1/f ゆらぎ」は他にも多様な形態に適用できそうです。
「こもれび」を生み出す2次元スペクトル解析 / 多目的最適化
The 1/f fluctuation (Pink Noise) of 1D spectrum makes musics or visual patterns to be comfortable and natural.
Spectrum analysis is applicable to 2D phenomena.
1次元の波が「1/f ゆらぎ」の特徴を持つと、「ナチュラル」「快適」に感じると言います。
これを2次元に拡張して画像に適用することを試みます。
Komorebi : Sunlight comes through leaves in the woods.
Sazanami : Ocean ripple, containing acoustics.
Seseragi : River stream, containing acoustics, cool breeze, humidity, smell of moss, and Komorebi.
日本には素敵な言葉があります。
「こもれび」「さざなみ」「せせらぎ」
「せせらぎ」は、音だけでなく光、温度、気流、湿気が織りなす空間です。
画像処理の手法に「2次元スペクトル解析」があります。画像のピクセルの色の値は、X, Y方向に並ぶ数列と見ることができますが、それを波形と見なし、その「ゆらぎ成分」をフーリエ変換し、「パワースペクトル」を描きます。
これを使って、「ナチュラル」「快適」といった環境評価を物理現象として捕らえることを試みます。
→
Original image / 2D power spectrum image converted from grayscale image
White = high power, Dark gray = low power, Navy = 0.0
「木漏れ日」の画像の「ゆらぎ」の2次元パワースペクトル
Sample image : 64x64 pixels
2D spectrum is a top view of the 3D diagram
2次元のフーリエ変換の式は、1次元とほとんど同様です。
波のデータが M×N 個あるとする。(M, N は偶数とするのがよい)
amn = a00, a01, a02,… a(M-1)(N-1) (m = 0〜M-1, n = 0〜N-1)
複素フーリエ係数を Ckl (k = 0〜M-1, l = 0〜N-1)とすると、
とおくと、
Original image / Monochrome / 2D power spectrum / 1D power spectrum
Komorebi (sunlight through leaves), Full wave
木漏れ日,画像そのままのパワースペクトル
Komorebi (sunlight through leaves), Fluctuation wave
木漏れ日,「平均値」からの「ゆらぎ」のパワースペクトル
Komorebi (Sunlight through leaves) / Japanese Pampas Grass / Weird Ground
Weird Ground is showing similarity with White Noise.
You can list up 2D spectra of some images, and the list works as a catalogue of your perceptual expression for the patterns which you composed.
その他、自然の風景のスペクトルはこんな風です。
自分でリストアップした写真のスペクトルを用意することは、自分の感覚の表現法を「カタログ」として持つことに相当します。
2D Spectrum Catalogue
Ocean Ripple / Komorebi / Fleecy Cloud / Autumn Woods / Pampas Grass
2次元パワースペクトルのカタログ
さざなみ / こもれび / わた雲 / 紅葉の森 / すすき野原
これを構築物と比較してみます。
構築物が生み出す景色を分析する、または目標のスペクトルを実現するように構築物の模様を最適化する、といった活用が考えられます。
Transparent Structure as Perceptual Filter, Workshop at Stanford University
Sunny Hills in Aoyama
Veiled Tectonics 2018 : Thistle Leaves, Structural Design Studio, The University of Tokyo
Overlapping glass structure shows a spectrum quite similar to Komorebi scene.
Shaggy Kigumi structure shows a spectrum similar to Autumn Woods scene.
Veiled Tectonics shows a spectrum that has some elements of Autumn Woods and Pampas Grass.
スタンフォード大学ワークショップでのガラス構造は、「木漏れ日」とほぼ同じ。
Sunny Hills の木組は「紅葉の森」に近い。
世界最薄の布「天女の羽衣」の膜テンセグリティは「紅葉の森」「すすきの原」の要素を持つ。
これは「構造要素」と「環境要素」の両方を形状最適化の「評価指標(目的関数)」にしている「多目的最適化」をしていることになります。
真夏の海岸で読書するのも心地よい、そんな環境を定量的に認識できるかもしれません。
Creating Komorebi using only circles
幾何学模様の組み合せで目標のナチュラル度を生み出すこともできそうです。
Carved Tower のパーゴラ
建築家:隈研吾建築都市設計事務所
構造 :佐藤淳構造設計事務所
Published: Lixil eye 13, 2017
Kigumi pergola of 15m tall, 40m long, located at the bottom of a skyscraper.
超高層ビルの足元で計画されている、高さ15m、全長40mのパーゴラの計画です。
Partial model
Taking this flexible angle joinery into account, the shaggy shape could be provided using parametric algorithm.
Fanning 5-column modules are located on waved lines.
Column modules are connected with fanning elements.
Number and location of crossing points can be structurally optimized by the parameters of this geometry.
木組シリーズ第5弾:バンクーバーのパーゴラの部分模型
波形に並んだ柱を斜材で扇状に紡ぎ、「射影写像」によって材の密度を操作します。
接合角度もパラメーターとなっている幾何学操作で形態を最適化することになります。
Flexible Angle Kigumi Joinery
To interlock the timbers in a free 3D-angle, this carved shape could be detected.
It can be carved by CNC roughly, and carpenters will finish them.
このために「交差角」と「ひねり角」が自由な相欠の刻み方を考案しました。
CNCでこのような入隅が刻めるようになると木組みの自由度が格段に増すことが期待されます。
自由交叉木組の棚「すすき」, 2021
設計:Mariya Stoycheva + Ruta Stankeviciute/東京大学佐藤淳研究室
木材加工:八文字雅昭/はち工房
吉野檜調達:中村光恵+藤井さこ/littlemedia
奈良県農林部奈良の木ブランド課
吉野檜製材:吉田製材株式会社
Carved Tower が建つのを待ちきれないので「自由交叉木組」を使って家具を作ってみました。
自由交叉木組の棚「すすき」 → 柏キャンパス環境棟にて常設展示中
縦材48本、横材42本、縦材が「すすき」のように横材を紡ぎます。
「吉野檜(ひのき)」を2cm角に製材してもらえました。
木目の真っ直ぐ通った材なので、細く製材しても斜めに割けません。
設計途中の3Dモデル / 最初の模型
Flexible angle joinery to cross in narrow angle
浅い角度の自由交叉の3Dプリント / 刻まれた2cmの角材
浅い角度の「自由交叉」はこんなに鋭角な部分を残さなければなりません。
これはまだ「CNC加工機」では刻めません。
それを家具大工の八文字雅昭さんにたった1人で刻んでもらえました。
「鑿(のみ)」と「小刀」の技が冴えます。
「柿渋」を塗って防腐仕上げします。
足元を決める「波」を描き、上に交点を決める「うねり」を2本描きます。
それをコントロールポイントとして縦材を並べます。
横材がそれぞれ必ず2点以上で支える位置を見つけます。
そこから、材の芯同士が5mmほど離れていると程よく断
面が残って強度が確保できるので、そういう位置を「自動
探索」させて「最適化」しました。
材の位置が決まると交叉部の刻み形状を「半自動生成」できます。
伝統の大工技術と最新のデジタル技術が融合した形態が生まれました。
A tool to carve this shape is under development in Jun Sato Lab, The University of Tokyo.
自由交叉木組を5軸CNC加工機で刻めるようにする研究開発
八文字さんが小刀を使っているのを見て学生が5軸CNC加工機に小刀の動きをさせてこれを刻む研究開発をしました。
まだラフで刻むのに時間がかかりますが期待感ある程度にはできました。
CNC加工機でできることが増えると、大工に取って替わるのではなく、大工の技をさらに惹きだせると感じます。
Digital Fabrication を駆使した Parametric Design を実施するにはまだ少し手間をかけなければならないけれど、途方もないものではなくなってきました。
パプア島のKorowai族のツリーハウス
http://www.natgeocreative.com/ngs/photography/about/index.jsf
インドのMeghalayaのルートブリッジ
https://amritmahotsav.nic.in/blogdetail.htm?82
パプア島のKorowai族は地上30mの上空にツリーハウスを設営して暮らしています。インドのMeghalayaには生きた根を引き寄せて橋を作る民族がいます。我々にこんなことができるでしょうか。文明が発達すると「できなくなる」ことがあるようです。
でも座屈解析も、非線形解析も、デジタル加工機も、宮大工の職人技も駆使して、光が透過する「半透明」な構造を創ることができるようになりました。そうして自由に木を扱えるようになると、「こもれび」のようなナチュラルな光の溢れる自由な形態も生み出せそうです。
壊れても死なない構造
極細の材でもボリュームある躯体を形成すればフルスケールの建築が作れるかもしれません。
か細い材でできた透過性ある構造が「ナチュラル」な空間を生み出しながら、災害で「壊れても死なない」、そんな構造が生まれそうです。
計画地:東京都
ツリーハウスクリエイター:小林 崇
建築家:西田 司
構造 :佐藤淳構造設計事務所
ShopBot導入協力+CNC加工協力:秋吉浩気/VUILD
Treehouse creator: Takashi Kobayashi
Architect: Osamu Nishida
Structure: Jun Sato
板を噛み合わせて曲面を作る木組です。
Wood siding pattern of Kigumi could be developed using wooden boards of 60mm thick.
カマキリの卵のような非対称な曲面に、厚さ60mmの板材を「下見板張り」したように並べる木組の構造
基本の木組を試作してみる
CNC加工機で切削したものを大工に仕上げてもらいます。
Geometry of Kigumi / 3D printed mock up / Rough carving by CNC
パネル形状はパラメトリックに生成する。
3D プリントして組めることを確認。
研究室で188枚、VUILDなど手分けしてもらって200枚、あわせて388枚が刻まれた。
Panel distribution and carved shapes were generated paremetrically on asymmetric Mantis’ egg surface.
More the digital fabrication technology could be developed,
more we can try collaboration with carpenters to develop precise Kigumi.
CNC加工機でできることが増えると、大工に取って替わるのではなく、大工の技をさらに惹きだせると感じます。
Digital Fabrication を駆使した Parametric Design を実施するにはまだ少し手間をかけなければならないけれど、途方もないものではなくなってきました。
モジュール+接合金物製作:KINZI 株式会社
フレーム+接合金物製作:株式会社 Heartland Engineering
研究助成:ユニオン財団
立体モジュールをテンションロッドで浮遊させたような「テンセグリティ構造」のファサードの提案です。
建築家の平沼孝啓さんとのプロジェクトにも適用する予定です。
浮遊モジュールは、力学的最適化を施し、3Dプリンターを駆使して「こもれび」のようなナチュラルな光を通す形状をスタディします。
Partial model
4端を持つ枝型モジュールをケーブルでつなげたテンセグリティ構造
左:モジュール数=5個
右:モジュール数=8個
棒や立体モジュールがお互いに接触せずワイヤーでつながれて浮いたように見えるテンセグリティ構造です。
Module options designed by Tucky
立体モジュールは、ケーブルが接続する4点が同じ位置にあれば、自由にデザインできます。
タイの建築家 Tucky がこんなに提案してくれました。
Full scale branch module made of casted stainless steel
Module height = 1.5m
Equivalent cross section
Ellipse pipe 150x90mm, t=6mm at the middle of the branch
Ellipse pipe 180x100mm, t=6mm at the bottom of the branch
3Dプリント用モデル / ステンレスでキャスティングされた試作品
金属3Dプリントはまだ時間がかかりすぎます。
枝型モジュールは3Dプリントしたプラスチック製のモックアップから型を起こし
ステンレスを流し込んで鋳造されました。
全12パーツを溶接して一体化しています。
モジュールは植物を植えるプランターにもなっています。
構成要素
Supposed Wind Load = 980 Pa = 100 kgf/m2
Supposed Wind Speed = 66 knot = 34 m/sec
Horizontal deformation due to wind → around 4cm out of 10m span
Material
Compression Module
Yield stress 325MPa = 3.3tf/cm2
Tension element
Stainless cable 8mm diameter
ファサード全体の構造解析 / 3モジュールのモックアップの構造解析
変形と検定比(安全率)の表示(変形表示倍率=30倍)
安全率(検定比)が色で表示されます。
この図ではオレンジ色が最も厳しいことを表しています。
使用ソフトウェア:Hogan(佐藤淳構造設計事務所製)
Multi-objective Optimization using Generative Design
幾何学パラメーター / ランダムに形状が生成される様子
使用ソフトウェア:Rhinoceros, Grasshopper, Bio-morpher, Millipede
大学院生により、枝型モジュールを単純化した解析モデルを使って、
枝が集まる「集中点座標」
後枝の「先端高さ」
の2つだけを幾何学パラメーターにして力学的最適化が施されました。
Transition of objective functions
進化型多目的最適化の進行と目的関数の値
風圧に対する「たわみ」と枝型モジュールの「重量」を同時に小さくする多目的最適化を施します。
赤色が「たわみ」、紫色が「重量」を表します。
30世代の収束計算で「たわみ」「重量」とも小さな解に収束しました。
3 branch modules produced in Thailand
タイで3つの枝型モジュールを作ってもらえました。
3モジュールのモックアップが組みあがりました。
実施候補地では150モジュールほどを並べる予定です。
Stanford University seminar and workshop : Winter semester January ~ March, 2015
Tokyo session : June 13 ~ 14th, 2015
Lecturer : Beverly Choe, Jun Sato
Published in GA JAPAN, 2015
Using 1.3 mm thick engineered, high strength glass panels, connected by an aluminum straps, the installation was formed into a triangulated matrix resembling a 3 dimensional truss and reciprocal compositions.
これは、1.3mmという薄い超強化ガラス Leoflex, Dragontrail を使用したガラス構造です。Reciprocal,Lamellendach などと呼ばれる相互依存で安定する集積構造にも近い形式です。
風景に溶け込むように光が透過する構造
Glass: Leoflex and Dragontrail, 1.3mm thick, with holes, with safety film,
size = 600x600mm, 600x440mm, 300x300mm
Fastener: Aluminium straps, rubber washers, metal washers, glazing tape, bolts & nuts
Local geometry to reduce buckling length into 40cm out of 60cm panel
Structural analysis was resulted in the manipulation of buckling length to be less than 40cm.
最終形を想像した解析により座屈長さを40cmに拘束できればよいことが分かった
These forms are generated by controlling the buckling phenomenon through the geometrical configuration and optimization method.
孔あけは時間がかかるのであらかじめ開けたものを日本から供給。
ワークショップスケールでも、1.3mmという薄さのガラスで構築するためには座屈のコントロールが必須となる。
この薄さで成立させるには、座屈長さを40cm以下にする必要があり、定められた孔を使いながらランダムに配置するほうが、「座屈長さ」を短く拘束しやすいことが分かりました。
Vault shape with buttress was developed in Stanford University.
スタンフォードではヴォールト+片側バットレスで構成された
Branching dome was developed in Tokyo.
東京セッションでは扇形のドーム形状が構築された
アルミストラップによるフレキシブルな接合
In this system, the Fuzzy Node geometry enables the overall shape to become free form.
小片が集積した構造を設計するとき、接合に僅かに自由度があるfuzzyな節点と見なして設計できると全体形の自由度が増しナチュラルな模様にしやすくなります。このぼんやりとした節点は Fuzzy Node と呼べます。
Fuzzy Node のイメージ
あらかじめ孔を開けたものを供給したので、定められた孔を使いながらランダムに配置してゆく幾何学を探ってゆくことになりました。1枚のガラス板は、少なくとも3ヶ所で留められなければなりませんが、孔が点だと捕らえるとそれほどの数が一致するとは到底想像できません。
ですが、アルミストラップを曲げ、ひねって孔に馴染ませる接合具のおかげで接点がぼんやりとした節点 Fuzzy Node となり、そのおかげで格段に全体形を形成しやすくなりました。
いまや位置によって異なる形状の接合具を製造するのはそう不経済でなくなりつつあります。この接合はそれを代表していると見られます。
PENTA の接合部も Fuzzy Node として製作すると全体形のバリエーションが増しそうです
問題は、この幾何学操作を画面上で描けるようになることです。
既に構築された本体に材を追加することを考え、1点を動かすと各小片がどこに落ち着くべきか解く機構解析が必要です。
2つの小片が繋がった状態は下記のように「機構解析」の手法で行列表現できます。
接合点が Fuzzy Node になると、●の要素が追加されます。この●を具体的に解かずに他の値を決めることができないか、模索中です。
これを解くために、単純に条件を増やす手法は考えられます。
「重心の追従」や「小片同士の回転角に関係性を追加」といった方法があると判明しています。
重心追従法:ある頂点を引きずると、その頂点の行先へと重心が移動するという条件をつける
動作確認してみると思い描く動きに近い
複数要素を並べて全体形をデザインするツール
Electron Cloud, Uncertainty Principal or Soft Computing might have relationship with this algorithm.
●の値を特定せずに「固有値解析/特異値解析」で解く手法もありそうです。
量子力学の電子雲、不確定性理論、行列表現、または Soft Computing も参考になるかもしれません。
大学院生により「一般逆行列」を使って解の範囲を特定する方法が提案されました。
今後は、ユニットの増殖に適用できる手法を追究します。
Fuzzy Node P4-P5 が存在し得る領域
Design & Construction : Ken Yokogawa Laboratory, Nihon University
Structural Adviser : Jun Sato
計画:日本大学横河健研究室
構造アドバイス:佐藤淳
Like particles gathering into a protein molecule, 60 mm cubes made of hemlock spruce are connected by “ ¿ - inverted question” mark shaped eye bolts.
The structure gradually changes from a hard structure at the base to a soft membrane-like structure on the roof.
The distance between nodes should be the
dimension of the cube with factors of x 1, x ,
x
.
ツガ製の60mmキューブが?形のヒートンにより連なり塊にも膜にもなる。
キューブが3次元に軸力を伝えるため、基本的には立体トラスだと理解できてもそれを目で追うことが難しい。
1, ,
の長さのみで形成されるとも理解できる。
It seems we don’t have so many choices to compose the global / whole shape with only the 3 distances, but we could feel at the construction site, it is not so hard to add a cube.
It has been found because of the flexibility of the connection which can be called Fuzzy Node.
頂点を繋いでいくので、1, ,
の長さのみで形成されると考えてしまうとつなぎ方が限定されますがヒートンの僅かな「自由度」によって格段に組みやすくなることが体感できました。
小片が集積した構造を設計するとき、接合に僅かに自由度があるfuzzyな節点と見なして設計できると全体形の自由度が増しナチュラルな模様にしやすくなります。
これも Fuzzy Node の典型的な例と言えます。
ぼんやりとした節点 Fuzzy node
Growth Process with Fuzzy Node
立方体を追加するプロセス
多目的最適化
力学的最適化で「半透明」な形態を生み出しながら光環境を同時に最適化する「多目的最適化」を考えます。
Lecturers: Mark Mulligan, Jun Sato
Published in AXIS, 2017
講師 : Mark Mulligan(ハーバード大学教授), 佐藤 淳
PET樹脂をウォータージェットでくり抜いた雪の結晶のようなピースを組み上げました。
「こもれび」の2次元スペクトルを実現する模様を目標にしています。
Komorebi Pavilion in Gund Hall, May 2017
Komorebi Pavilion in Autodesk Build Space, January 2017
周りの景色を反射して色どり豊かな「かき氷」のようになりました。
液体のようにも見えます。
Final shape of the snow flakes and configuration example
学生たちが考案した三叉の雪の結晶のようなパネル
→
→
→
Algorithm to convert the configuration typology into structural analysis model
難解な接合パターンを構造解析モデルに変換するアルゴリズムを考案しました。
2つのドームがクネクネとうねって交錯する形状を最適化しました。
Software component Hogan + Spectrum + Grasshopper + Python
ソフトウェアのコンポーネントを構築する手法の提案
特定のソフトウェアのプラグインとしてプログラムしないでリンクさせる
Software component Hogan + Excel
形状を生成するツールとしてExcelも便利です。
2D power spectrum, provided by the students, similar to Komorebi spectrum
結晶の形状と配置により「こもれび」の2次元スペクトルを実現するスタディ
学生たちが「こもれび」に近いスペクトルを作るのに成功しました。
2D power spectrum of Komorebi
光の屈折と反射が織りなす景色
Workshop ENSA Paris Val de Seine + The University of Tokyo
February 17th – 20th, 2020
In 4 days workshop, the students could design and build the tower with a height of 10m, using world-thinnest Washi paper and 3mm slender timbers.
4日間のワークショップで「極薄和紙の巣」と同じ材料でタワーを作りました。
10m tower built in Kashiwa campus, The University of Tokyo
世界最薄の和紙と3mmの木材による高さ10mのタワー
Colors extracted from plants / Frame form study
3 teams worked on Footing / Body / Head
Lift-up construction process
Structural Design Studio, IEDP Integrated Environmental Design Program, the University of Tokyo, 2018
IEDP「建築構造デザインスタジオ」は毎年12名前後が履修し皆で構築物を構築します。
Semi Tensegrity structure composed of
Super Organza, the world thinnest and lightest fabrics, and 4mm carbon rods.
This structural design could show similarity with the 2D spectrum of autumn woods and pampas grass.
このスペクトルは「紅葉の森」「すすきの原」の要素を持っていそうです。
Lightweight and ductile structure will prevent death in the event of collapse.
When we think of natural space, we can think of saving people at the same time.
細やかな材が織り成す「軽量」な構造デザインは災害で壊れても中に要る人が死なない構造になりそうです。
屋根や床に充分に深いデプスを採り数多くの材で形成すれば建築スケールでもできそうです。
自由な形状で「ナチュラル」な空間を追求することが同時に「壊れても死なない」構造の追求にもなっています。
21 21 Design Sight での「虫展」展示作品
空中を漂うかのように儚げに「トビケラ」を優しく包み込む「巣」です。
「ひだか和紙」でつくられている、一平米でわずか1.6gしかない、世界で最も薄い和紙をピンと張って、
吉野でつくられたわずか3mmの「ヒノキ」と「ケヤキ」の骨組を引き締めます。
華やかに「草木染め」された和紙は折り重なって木漏れ日の「様相」を生み出します。
「柿渋」が塗られた骨組は和紙の色彩を引き立てます。
しなやかに反った骨組は、あらかじめ引き締められると硬さを発揮します。
アザミの葉のようなモジュールが寄せ集められる様子は力学的に「最適化」されています。
生物の形態に習う手法は Biomimetics と呼ばれます。
高知県のひだか和紙で「世界最薄の和紙」がつくられています。
典具帳紙という種類の「土佐和紙」です。
極薄で透明ですが張力材として使えそうです。
1mmのヒノキで骨組をつくって張ってみました。
材の長さを不均等にして、端だけでなく途中も束ねると、不思議な状態で安定します。
極軽量な「アザミの葉」のようにトゲトゲしたモジュールができそうです。
これをたくさん集めたトビケラの「巣」をつくることにしました。
アザミ : https://plumkiw948.at.webry.info/201307/article_9.html
極薄の和紙を「草木染め」してみました。
和紙は植物の繊維がからみ合い「水素結合」でくっついています。
濡らすと水素結合が外れてしまいます。
染めるには液に浸さなければなりません。
なのに佐藤千香子さんに草木染めに成功してもらえました。
こんなに鮮やかに染まりました。
「巣」を大きくして全長9m、高さ3.2mにしました。
この大きさでも3mmという細さの木材でできますが3mmでは木目が通りません。
なのに奈良県の吉田製材で「吉野ヒノキ」と「ケヤキ」を細さ3mmで長さ2mに挽くことに成功してもらえました。
「柿渋」には防腐効果があります。
木材に塗ってこげ茶色にすると草木染めの華やかな色が引き立ちます。
木材を束ねる1.5mmの綿糸も柿渋で染めておきます。
和紙は「デンプン糊」で木材に接着します。
木材を少し引き締めながら張ってゆきます。
そうしてあらかじめ弾性範囲で反らせることを「ベンディングアクティブ」と言います。
もとは柔らかかった木材に重さが加わっても、ピンと張った和紙が緩むまではあまりたわみません。
するとモジュールは硬いものに見えるようになります。
SCI-Arcと東京大学の皆でモジュールの形を生み出します。
そうして1/2サイズのモジュールが54個できました。
皆が「端点の数」「材の数」「端点に集まる材の数」を並べるとタイプを特定できることに気付きました。
長さと束ね方でだいぶ異なる形状に見えても、つながり方が同じものは「トポロジー」という数学では同じと見なします。
そうして15タイプに分類されました。
モジュールを集めて1/2サイズの全体模型ができました。
つなげ方を考えずに皆が自由に作ったモジュールですがうまくつなげることができました。
通り抜けられる通路も開きました。
実大の製作が始まります。
モジュール1つは100gしかありません。
54個でもたった6kgです。
ケヤキはヒノキよりも2倍ぐらい硬くて強いので下のほうのモジュールに使います。
いよいよ現地で設営です。
つなげながらより強い形状を探ります。
→
並行して構造解析によって形状を力学的に「最適化」します。
「形態解析」とも呼ばれます。
最適化する前は解析モデルに赤い材があり弱すぎることを表しますが最適化して赤色をなくしました。
モジュールは1.2mmの「銅針金」でつなげます。
皆がこんな綺麗な結び方を見つけました。
ここでは半剛に留められるのを使うことにしました。
1.2mmの銅針金は木材に巻きつけると木材が程よく凹んで抜けなくなります。
脚が広がらないようにオモリが必要です。
「岩」をひろってきました。
これも銅針金で綺麗に結びつけます。
華やかな和紙は折り重なって「こもれび」のナチュラルさと同じようなスペクトルを放ちます。
Structural Design Studio, IEDP Integrated Environmental Design Program, The University of Tokyo, 2014 & 2015
Operations will also result in developing a lightweight and ductile structure which will prevent death in the event of collapse.
From this studio we proposed Nebuta Tectonics composed of steel wire frame covered with Washi paper.
Published in GA JAPAN, 2015 / Shinkenchiku, 2015
“ねぶた構造”− 壊れても死なない構造
建築構造デザインスタジオ, 東京大学環境デザイン統合プログラム 2014 & 2015
これは、針金の骨組を和紙でくるんだ、青森の「ねぶた」の表皮のような架構です。
3mmの針金でラチス状の骨組を作り、和紙を引張に効かせます。
軽くて柔らかくて、災害で壊れても人が死なない、そんな構造の提案です。
Nebuta Tree House, 2015 (Photo by Ying Xu)
Referring to Nebuta, the floats for the festival in Aomori,
this structure is composed of Washi paper and 3mm steel wires.
When the Washi papers are coated with oil, they turn into translucent material. They will work not only for bracing but also serve as Filters for environmental elements.
ねぶた構造,2015年度の「ツリーハウス」
和紙に油を塗ると半透明になり、光や熱に対する「フィルター」としての役割を持つようになります。
針金の「座屈」と「塑性化」を操ることによって、壊れるときはムニュっと変形させます。
Japanese traditional Washi papers are made of fibers of Kozo or Mitsumata plants. It is an organic material, made of only the fibers of plants, without chemical glue. It is strong as the fibers are longer than other papers.
日本伝統の和紙は楮(こうぞ)や三椏(みつまた)の繊維で作られ、繊維が長いので強い紙です。繊維同士は水素結合だけでくっついている自然素材です。和紙で作られるものには、「ねぶた」「和傘」「提灯」「紙風船」などが挙げられます。
(No Photo) (No Photo)
Nebuta ねぶた
http://chao01.cocolog-nifty.com/blog/2007/10/post_b822.html
http://tuproduce.blog32.fc2.com/blog-entry-593.html
Nebuta floats in Nebuta Festival, Aomori, Japan are made of Washi paper, steel strings.
青森の「ねぶた祭り」で巡航する「ねぶた」の表皮は、針金で形を作り、和紙で覆っています。内部には木材の骨組がありますが、今回の構造は木材は使っていません。
和傘
Japanese traditional umbrella Wagasa, representing a lightweight structure,
made of Washi paper coated with linseed oil or perilla oil for waterproof.
The frame is slight and woven with colorful string to prevent buckling.
和傘は軽量で柔らかい構造の代表格です。
和紙で覆われ、防水のため亜麻仁油(あまにゆ)や荏油(えのあぶら)が塗られています。
か細い骨組は色彩豊かな糸で編まれ、この糸が座屈止めの役割をしています。
To resist against the first blow in spring (February or March) called Haru Ichi-ban, imagining the wind speed 20 m/sec, we practiced a materially nonlinear analysis, concerning the Washi papers as tension elements and controlling the buckling phenomenon and plastic state of 3 mm steel wires.
In this case the buckling length was found to be manipulated to less than 40cm.
The shape was decided through structural analyses, material strength tests, drag coefficient tests, anchor strength tests.
「春一番」を想定して風速 20 m/sec に耐える形態を目指します。3 mm の針金の「座屈長さ」は 40cm 以下に制御する必要がありました。和紙の材料試験、抗力係数の解析と模型による計測、アンカー用スクリューペグの引張試験、風荷重に対する材料非線形解析を経て、空気抵抗の少ない形状を決定しました。
Captured model
Drag coefficient analysis by Flow Design (Autodesk), experimentation
抗力係数を計測し、Flow Desgin (Autodesk) の解析と比較する
Washi paper tensile test / Screw peg plucking test
和紙の引張試験/アンカーの引き抜き試験
Materially Nonlinear Analysis
実験結果を反映して材料非線形解析を行なう
Nebuta Tree House, 2015 (Photo by Ying Xu)
ねぶた構造,2015年度のツリーハウス
When the Washi papers are coated with oil, they turn into translucent material. They will work not only for bracing but also serve as Filters for environmental elements.
Lightweight and ductile structure will be applicable also for Lunar Base and Mars Base.
和紙に油を塗ると半透明になり、光や熱に対する「フィルター」としての役割を持つようになります。
針金の「座屈」と「塑性化」を操ることによって、壊れるときはムニュっと変形させます。
このように、多様な材料でできた面材やメッシュ状の構造が「ナチュラル」な空間を生み出しながら、細かな材でできているおかげで災害で「壊れても死なない構造」に発展する可能性を持っています。
Lightweight and ductile structure will prevent death in the event of collapse.
When we think of natural space, we are thinking of saving people at the same time.
Although it is impossible to know everything of great nature, it is impossible to control great nature, when we learn the great nature a little more, we can save people a little more.
か細い材でできた透過性ある構造が生み出す「ナチュラル」な空間を追求することが、災害で「壊れても死なない構造」を追求することにもなります。
あと少し自然を知っていたら、あと少し多く人を助けられるに違いありません。
支援活動
Architectural assistance : Akiko Okabe Lab, The University of Tokyo
Technical assistance : Jun Sato Lab, The University of Tokyo
Support project in Barrio Cantera, San Martin de los Andes, Argentina, where is exposed to landslide every year. We could build handmade retaining walls, collaborating with local people using local materials, to resist soil pressure when the cliffs fell down.
アルゼンチンの San Martin de los Andes にあるスラム「Barrio Cantera」の支援, 2018年5月
東京大学岡部研究室のスラム支援へ協力しました。
毎年少しずつ地滑りが起きる斜面地に住み着いたスラムのために「親杭横矢板」の山留壁を構築しました。
Retaining Walls in Barrio Cantera, San Martin de los Andes, Argentina, 2017
(Photos : Claudia Sakai, Akiko Okabe Lab, University of Tokyo)
http://www.viviendaneuquen.gov.ar/site/web/site/detalle?id=21
The wall is composed of small I beams inserted into the ground, and wooden sidings in between.
The walls were painted by the kids fascinatingly.
地面にH形鋼を突き刺し、木製の横矢板を滑り込ませます。
もとは地下を作るときに土が崩れないようにするための工法です。
子供たちのペイントにより華やかになりました。
Awarded: Golden Lion
Architect: Toyo Ito, Kumiko Inui, Sou Fujimoto, Akihisa Hirata
Structure: Jun Sato
For the recovery project from the Tohoku Earthquake 2011,
the logs of the cedar trees that were exposed to Tsunami could be composed into the meeting house for the people.
This project was exhibited in Venice Biennale 2012.
House for All in Rikuzentakata / Exhibition in Venice Biennale
https://www.inuiuni.com/projects/482
熊本県復興支援住宅 + みんなの家
計画 :2018年
計画地 :熊本県
意匠設計:工藤和美+堀場弘/シーラカンスK&H
構造設計:佐藤淳構造設計事務所
甲佐町の復興住宅
縦格子の耐震要素のモックアップ
この構成では壁倍率1.5程度の性能があると分かった。
熊本地震の復興住宅のプロジェクトでは、縦格子の耐震要素を提案している。横桟の数や幅を増すと効果が大きい。製作に手間がかかるので数少なめにしか使用できないが、細かな材で構成された透明感ある木造耐震要素の可能性を追求するものとなっている。
豊野町の響原復興住宅「みんなの家」の和傘構造
Dhillon Marty Foundation international workshop in Punjab, India
Schools : The University of Tokyo, Stanford University, The University of Oregon, Rhode Island School of Design, Guru Nanak Dev University
Students from : Japan, U.S.A., India, China, Greece, Columbia, Indonesia
Public Toilet Design Competition in 3 days
5 clusters of students proposed the public toilet design.
Public toilet represents the social problems in India as follows,
Sanitation on water, foods, streets
Gender problem such as safety against crimes for ladies
Gap between rich and poor
Design Build Workshop in 2.5 days
Design build team was composed with 2 or 3 spies from each 5 clusters of students.
A kind of private space, also imagining the public toilet, was designed with some elements extracted from those design proposal of 5 clusters. The spies had to bring those informations from each clusters.
We can design structural elements which also work as environmental elements by designing filter for light, heat, air, water, sight, insects, person.
Keywords Delivered: water filtering / air ventilation / use waste for fertilizing / natural material / lift up the floor
Shopping for materials and tools
Materials : local fabrics, bamboo, metal wire, strings, metal bars, plywoods, screws
Tools : saws, pliers, hand drills, hammers, needles, screwdrivers
Studies on bamboo frames
Brick and timber for lifted platform.
Instable frames stabilized by fabrics
Mesh structure with semi-transparent fabrics for filtering light and sight
Cellular spaces by branching membrane
Final shape with 15m length, indicating a gate, lifted private room covered with layered filters,
rest space, air ventilater.
Architect: Junya Ishigami
Structure: Jun Sato
Aluminium “balloon” of 14m height, weighing roughly 1 tonne.
The balloon with aluminium lattice endoskeleton, filled with helium gas.
Awarded: Golden Lion
Architect: Junya Ishigami
Structure: Jun Sato
Rigid frame structure composed of 0.9 mm CFRP columns, 1.2 mm CFRP beams could be stabilized
by invisible bracings made of 0.02mm polyalyrate fibers.
Architecture as air in Arsenale / Buckling analysis model
http://contessanally.blogspot.jp/2010/08/venice-12th-biennale-of-architecture_26.html
膜テンセグリティ / エンジニアリングは省略の技
Designed and constructed by students
Structure: Jun Sato et al.
Tensegrity structure composed of a membrane supported by carbon (CFRP) pipes.
アーキニアリング展 “ Big Art ”, 2008年
カーボンの棒を膜の中に突き立てることによって安定する全長12mの「膜テンセグリティ」構造。
引張材を膜にすると張力の伝達に広がりが生まれ、独自の形態が生まれる。
カーボンは、高弾性と高強度を選択できる。高弾性のものは鉄の2倍ほど硬く、座屈に強いので圧縮材に相応しい。
膜はツーウェイソフトという製品で、200%程度の伸び能力を持つ。
Design & Construction: Kazuhiro Kojima Laboratory, Tokyo University of Science
Structure: Jun Sato
意匠+施工:東京理科大学小嶋一浩研究室 → 横浜国立大学YGSA小嶋一浩研究室へ継承
協力:太陽工業株式会社
Membrane tensegric structure composed of membrane and aluminum pipes.
Membrane work as tension wires and pipes are working as compression particles.
Length 26 m, Span 8 m.
膜に圧縮材が貼り付いた形式の膜テンセグリティ構造です。
圧縮材の途中にも引張応力が分布することによって独自の形態が生まれます。
全長 26m,幅 8mのドームは非常に軽量で総重量 600kgf、40人程度で人力で建てられます。
・エンジニアリングの手法
Structural calculations which I have provided were only these written on this paper at a meeting.
Omission is one of the techniques of engineering.
Engineering is a technique of omission. We still confront unidentified phenomena. We never have enough time to try all the calculations we desire. We try to suppose a simplified model with fewer calculations and figure out if the structure is feasible. This aspect has to be acknowledged by society.
学生たちが考えたこの構造を実現するにあたって行なった計算は、打ち合わせの際にA4判の紙の半分に書き殴ったこのメモだけだった。
クリティカルな部分を見極め、極めて単純化されたモデルを思い浮かべれば、簡素な計算でそれが成立するかどうか判別できる。
全体が落ち着く形状を求めるのは非線形解析になるが、最終形が想像できればその必要はない。
デプスによって生まれる剛性を予想し、アーチの座屈強度で判断する。
曲率を与えると棒が膜を押し上げて張力が入る。そうして折板構造に近い形状になりデプスが生まれ、アーチの座屈に耐えられる剛性が生まれる。計算メモを追ってみる。
アーチとして発生する軸力を計算する。
重さを w = 5 kgf/m2 とする。
スパン L = 8m、高さ H = 3m のアーチとする。
棒のピッチを 1m とする。
アーチを放物線で y = αx2 として y = 3 、x = 8/2 = 4 を代入すると、
α= 0.1875
アーチの足元での傾きは y’= 2αx = 1.5 なので傾きは 1 : 1.5 だと分かる。
アーチ全長を約12mとして、足元での鉛直反力は、
5 kgf/m2 × 1 m × 12 m ÷ 2 = 30 kgf
すると軸力Nは、
N = × 30 kgf = 37 kgf
これに対し、強度を計算する。
木材の丸棒φ25mmとすると、断面積は、
A = 4.91 cm2
生まれるデプスが 100mm とする。膜の断面積は不明だが、木材の棒と同じとしてみると、断面2次モーメントは、
I = 4.91 cm2 × 52 cm × 2 = 245 cm4
ヤング率は硬質樹脂程度で E = 20 tf/cm2 とする。
アーチの座屈長さ Lk = 0.4L〜0.5L 程度と知っておくとよい。Lk = 0.5L = 0.5 × 800cm = 400cm とする。座屈荷重は、
Pcr = =
= 0.302 tf
これは N = 37 kgf に対して8倍の余裕があるので問題ないと分かる。
たったこれだけの仮定と数式を頭に浮かべ、電卓をたたくのに10分もかからない。
こういうモデル化の感覚を身につけ、限られた時間と費用の中で検討項目を見極め、実現を可能にする「省略の技」こそ「エンジニアリング」であり、その技が責任や説明を追求しすぎる社会のために発揮できなくなって、世界的に危機にさらされていることが社会から認識されなければならない。
最初はアルミパイプが挿入された膜を地面に敷く。
周囲を皆で囲み、端部のアルミパイプを起こしながら、中央部を少し押し上げると自然に膨らむ。
このドームは、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の被災地での支援活動の集会所などに活用されている。
ステンドグラス構造
Design & Research: Jun Sato Laboratory, University of Tokyo
Structure in Architecture is appearing diverse forms composed of diverse materials, constructed by diverse methods, and exposed to diverse impacts.
The stained glass panels are made by fixing glass in a slight metal frame, which represents the diverse forms in the manner mentioned below.
As we can see it is sufficiently complex composite to develop a dynamics operation, when completed, it can be adopted for many of other structures.
細い金属骨組でガラスを拘束したステンドグラス構造の研究。多様な材料と現象を伴う構造の代表として捕らえ、力学形態を操る設計法の構築を目指しています。
Left, Middle : Stained Glass Structure test specimen
Right : Pop-up Stained Glass using brass frames, Workshop 2012, Jun Sato Lab
自由曲線模様と卍型模様のステンドグラス構造の試験体
As the cushioning materials inserted between the glass and metal frame are required to be resistant to UV damage, we are using tin plates which we found to be effective.
紫外線劣化しない緩衝材として、錫が効果的なことを提案しています。
Joint Detail
紫外線劣化しない錫を緩衝材にする納まり
Perfectly Plastic Surface Diagram
Axial force – Bending moment interaction curve considering buckling phenomenon
座屈を考慮した降伏曲面
材が細くなって「座屈」の影響が大きくなると、軸力と曲げなど応力の相関曲線「降伏曲面」が凹みます。これを「塑性ヒンジ」の挙動に考慮する必要があります。
Tuning up the simplified model to fit to the loading test
線材モデルによる立体座屈解析,実験の荷重変形曲線,解析による荷重変形曲線の再現
実験結果を再現できる解析モデルを構築することが、この構造を理解し設計法を構築することにつながります。
複数の材料、線材と面材、緩衝材のスズがつぶれてゆくときの「等価剛性」、ガラスと骨組材の相互の「座屈補剛効果」、といった構成のモデル化を提案します。
Apartment House in Wasedatsurumaki, 2015, Architect : Yoshio Sakurai
Published : Nikkei, 2017
早稲田鶴巻町の集合住宅 (2015年,建築家:櫻井義夫) で実現しました。
ガラス溶着
板ガラスを溶着し、大判またはシームレスなドームや多面体を製作する方法を提案する。
目標は、目地部のみを1200℃程度に加熱して溶着し、このとき数十センチ離れた部分が全行程で常温に留まること。
これが実現できれば、現場での大判の溶着が可能となる。
Published: JIA journal, 2015 & 2016
ガラス端部を外部に露出させた溶着装置,溶着成功した例
ガラスは冷却時にアニーリングと呼ばれる530〜550℃程度での温度保持で残留ひずみを緩和する。
この温度では分子がゆっくり動ける。
530℃程度以下では分子の移動がほとんど起きないということでもある。
2015年度、目地部1000℃、周辺温度 120 ℃で長さ30cmのガラス同士の溶着に成功した。
これで530℃を下回る温度領域が周辺に存在できる可能性が示された。
将来的に目地部を走査する「溶着装置」を開発する場合に、装置の幅は50cm程度でよい可能性も示された。
現在、大きなガラスでの実験のために大型炉を準備中。
温度履歴
温度分布の勾配
残留ひずみを再現できる解析アルゴリズムの開発も開始した。
セナルモン法による残留ひずみの画像と解析の比較
2013年度、滝口雅之の卒業制作において、箱状の溶着が試みられた。
箱状に溶着した試作品,溶着装置
この卒業制作「GLASS CUBE」により、滝口雅之が「中村達太郎賞」を受賞。
2015年度、西村祐哉の卒業制作において曲面ガラスの溶着に成功した。
スランピングにより曲げたガラス板を溶着したアーチとドーム
ガラス構造
Architect: Junya Ishigami
Structure: Jun Sato
Four greenhouses were built around Japan Pavilion in Giardini della Biennale
using slight and rigid jointed steel frame covered with glass sheet.
か細い超高張力鋼とガラスで構成されるラーメン構造。
植物のために建築の存在感を薄くすることを目指します。
Greenhouse of 2 m height with 16x16mm columns and 8mm glass walls
Greenhouse of 6 m height with 32x32mm columns
To provide a transparent structure, we used ultra-high strength steel for the frame, and used glass walls as tension bracings.
The columns are located randomly, and a form optimization could contribute to detecting their location.
First model
Frame using super high-tensile steel
Heating process using gas burner
Screenshot of form optimization software
Development of Manual Form Optimization Software is contributing for optimised location of columns.
「あぶり」を使って極細に絞った鉄骨ラーメン構造とガラス構造の温室
林立する柱の位置を最適化する「手動形態解析」のソフトウェアも作成しました。
fix-fix fix-hinge hinge-hinge fix-fix+sway fix-hinge+sway
α=0.5 α=0.708 α=1.0 α=1.0 α=2.0
Buckling strength : Pcr =
E: Young’s modulus [tf/cm2]
I: Moment inertia of section [cm4]
Lk: Buckling length Lk =αL [cm]
Deformation, Bending stress diagram of rahmen structure due to gravity
Heat cambering of the steel is an important process in the fabrication of the structure as it reduces deformation as well as bending stress.
「撓鉄」と呼ばれる「あぶり」の技術を使って変形と曲げモーメントをコントロールすることができます。
Process to reduce deformation and bending stress
Architect : Sou Fujimoto
Structure : Jun Sato
Stacked structure of glass walls and acrylic resin walls.
A simple structural analysis model was developed for seismic response analysis.
Exterior and interior under construction, Structural Test
Structural Analysis Model
Section Drawing
Details
Load displacement curve, Seismic response analysis
3D Printed Lattice3 Model / Eoffel Tower (Photo : Jun Sato)
Eiffel Tower is a composition of Lattice2, that is lattice made of lattice.
Lattice3 with optimized form will become able to be manufactured in these years.
角形鋼管はラチス化することによって鉄骨量を減らし半透明にすることができます。
エッフェル塔はラチスの弦材と斜材をさらにラチスにしてこの透明度を発揮しています。
いまのデジタル技術と溶接技術を駆使するともう1段階ラチス化することができそうです。
オーストラリアのプロジェクトで提案中。
Ponds des Art / Gare de Lyon (Photo : Jun Sato)
19世紀には鉄が高価だったため手間をかけてでもラチス化することが経済的でした。
(No Photo) (No Photo)
Pennsylvania Station 1910 / Gare de Tours 1898
隠れて生きる構造デザイン
2010年竣工
意匠設計:藤本壮介建築設計事務所
構造設計:佐藤淳構造設計事務所
階数 :地上2階,地下1階
構造 :鉄骨造
本棚が渦巻き状に配置された図書館。
両面本棚の隙間に鉄骨の薄っぺらいラーメン構造を納めている。
基礎伏図,柱伏図
柱が螺旋状に配置されている。
「細幅H形鋼」でできた薄っぺらい「ラーメン構造」を本棚の隙間に仕込む
角形鋼管のずんぐりした柱に比べて、背が増えて数が増えても、鉄骨量はあまり増えず幅が小さくできる。
ラーメン構造と言ってもバリエーションは数多く考えられる。なかでもブレースを使わない純ラーメン構造は柔らかな構造(柔構造)となる。これを成立させるためにはひと工夫が必要になり、それが形態を生み出す。
曲げモーメント図を立体的に見る。
H形鋼の柱は強軸方向に硬いので、各方向の地震に対して強軸を向いているものが効いている様子が分かる。
薄っぺらい部材が曲げを負担するときは横座屈に注意が必要となる。
H形鋼の柱脚を「埋込柱脚」とし、地下躯体に埋め込まれている。
内部に林立する柱。吹き抜けの様子が分かる。
構造のほとんどは本棚などによって隠蔽されてしまうが、構造が建築の形態を生み出す効果の一端を担っている。
「隠れてなお生きる構造デザイン」と言える。
金属構造
Architect: Kotaro Imai Laboratory, University of Tokyo
Structure: Jun Sato Laboratory + Yoshihiro Fukushima
金属3Dプリントで自由角度の接合部を印刷して多面体を形成します。
この接合部にも Fuzzy Node の機能を仕込むと全体形のバリエーションが増しそうです。
Design & Build: Jun Sato Laboratory, University of Tokyo
A copper shell structure with 8m long fabricated by only hammering from a flat plate, with 40 students.
Considering the total energy consumption for this structure to appear, we discovered the energy consumption in processing the copper shell by hammering was only 7 %, of the total energy, while 93 % for manufacturing copper plate.
Copper Shell in the Exhibition Earth: Material for Design, 2010
意匠設計:山本理顕設計工場
構造設計:佐藤淳構造設計事務所
レストラン棟
鋼板によるシェル構造
茶筅状の柱はシェルに依存しています。
鋼板とFB(フラットバー)で「円織面」を形成します。
フラットバーの格子に薄鋼板を押し当てて弾性曲げさせながら溶接します。
ゲート棟
動物の形にくり抜かれた鋼板が屋根を支え耐震要素にもなっています。
外周は木造ピン柱で囲われています。
鉄骨と木柱の施工の様子
Architect: Riken Yamamoto
Structure: Jun Sato
Steel mesh structure composed of vertical and diagonal elements.
Mesh tectonics shows the craftsmanship is necessary to generate these structural, environmental elements.
公立はこだて未来大学研究棟
建築家:山本 理顕
構造:佐藤 淳
縦材と斜材で構成されるスチールメッシュ構造
Welding tecnique and reforming tecnique is necessary to fabricate these mesh.
「溶接」と「あぶりによる矯正」の技術が伴わなければこのようなメッシュは作れない。
立体座屈解析、構造実験を経て実現することができた。
Architect: Kazuhiro Kojima / CAt
Structure: Jun Sato
Shelf shaped sturcture with 6mm plates, without backboard by controlling 3 dimensional buckling.
ツダ・ジュウイカ
建築家:小嶋 一浩/CAt
構造:佐藤 淳
6mmの鋼板による背板のない棚状の構造。
When flat bar columns are located in radial arrangement, buckling strength can be found 4 times bigger than parallel arrangement.
立体座屈解析により、フラットバーの列柱を放射状に配置すると屋根の水平移動が止まり、座屈荷重が平行配置の4倍に増すことが分かった。
Buckling control of flat bar columns : Radial, Polygonal, Parallel
列柱の配置による座屈の制御:放射状,多角形,平行
Elevation of each grid structure based on buckling phenomena
In some case, forms generated by the optimization of buckling appears not visualizing the stress flow.
建築家とアイデアを練る作業は、建築家がぼんやりと思い描いていることを「言い当てる」ことのように感じる。
くだらないスケッチでもどんどん描いてみる。そうしているうちに座屈をお互い留める構造を思いついた。
最初は逐一聞くのではなく、「ブレースのないラーメン構造としてみよう」「材のピッチは2mとしてみよう」と勝手に想像して計算を始める。そうしてたたき台を作ってイメージを共有してから、「格子壁にしたらどんなサイズになるか」「もっと細かく材を並べたら」と徐々に鮮明に具現化してゆく。
ここで、打ち合わせのその場で計算する手法が役立つ。複雑な形状でも単純化して考えればほとんどの材のサイズをその場で決めることができる。座屈をお互いに止めあう機構を知っていたおかげで9mmでなく6mmでできる可能性があると分かった。
オリジナルのソフトウェアの開発も役立っている。膨大な数の試算の繰り返しでアイデアを練ることができる。
その場での簡素な計算 → MOOM
Architect: Riken Yamamoto
When flat bar columns are located in radial arrangement, buckling strength can be found 4 times bigger than parallel arrangement.
立体座屈解析により、フラットバーの列柱を放射状に配置すると屋根の水平移動が止まり、座屈荷重が平行配置の4倍に増す。
Buckling control of flat bar columns: Radial, Polygonal, Parallel
列柱の配置による座屈の制御:放射状,多角形,平行
Architect: Makoto Yokomizo
Cylindrical steel plate wall structure stacked up to 4 strories.
NYH : 2006年,建築家=ヨコミゾマコト
各階異なる配置の円形の壁が、4階積み上げられた構造。
円形壁は、9mmの鉄板にリブ FB-16x38 @300mm をつけて作っている。
Steel plate 9mm thick with reinforcing flat bar 16x38@300mm
幅3.4m,高さ2.9m,長さ11mのワンフロアを、長さで2分割しただけの2パーツで工場製作。現場で積層する。
Buckling strength of thin plate comes bigger when the curvature got bigger.
薄壁は、曲率を与えることによって座屈に強くなる。曲率半径をパラメーターとして座屈強度のグラフを描くと、半径が小さくなると飛躍的に強度が上がることが分かる。
Structural analysis model, Buckling strength - Curvature diagram
解析モデル全体図,安全率の色表示図,リブ付き曲面壁の座屈解析
Architect: Kengo Kuma
Structure: Jun Sato
1st examination of Kigumi with Kengo Kuma
Timber 3D grid structure without metal fixings at joint.
2nd examination of Kigumi with Kengo Kuma
3D diagonal grid acting as a hunched portal frame.
梼原町 図書館+社会福祉施設
計画 :2018年
計画地:高知県
建築家:隈研吾建築都市設計事務所
構造 :佐藤淳構造設計事務所
隈さんとの木組シリーズ第4弾。柔らかな鉄骨のラーメン構造に、4本交叉の木組がまとわりつきます。
4th examination of Kigumi – timber joinery without metal fixings.
木組の方杖を地震にのみ効かせることによって燃え代なしで現しにできます。
3D diagonal grid developed inside steel frames
Its geometry is not an imitated form of tree but showing some naturalness.
森林豊かな梼原町で、少々規模の大きいこの計画で、木組を駆使できないかと探ってみました。
耐火が要求される計画で木材を見せるには、地震にだけ効かせる手法があります。
重力に対しては、鉄骨構造だけが効くと考えます。
地震時にしか効かなくてよいものとすれば耐火を要求されないので燃え代も被覆も必要ありません。
木材を耐震にのみ効かせる方法のひとつ、方杖形式
鉄骨のラーメン構造の内部に木組のボリュームを添わせることによって、木造方杖として効かせます。
材は全て120mmで統一していますが、屋根と柱をつなぐ材が主材で、これに交差する材が座屈補剛材の役割を担います。
The frame has to be made of steel because of fire regulation.
Haunching braces of timbers work only against seismic load and wind load.
When the timbers work only for earthquake, not for gravity, fire matter doesn’t have to be considered.
4本の材が完全に1点で交わる立体菱形格子
格子に組むことによって座屈強度が増し、材を絞ることができ、木組の透明度を上げることもできます。
Center axses of 4 timbers are crossed exactly at one point.
Parallelogram grid with random spacing can be composed with same angles.
3D grid can increase buckling strength so that the timbers can be slender to be 120mm.
A constant angle was selected but spacings are random to create tree pattern.
We can generate natural pattern of forest with this geometry, without using imitated shape of trees.
交差角はやや自由に決められますが、角度は統一することとしました。
材のピッチをバーコード状に不均一にすると交差部の刻み方は全て同じながら、樹状の模様を生み出すことができ、そこにこの構造の自由度が現れています。
樹形を真似るのではない幾何学が独特の樹状模様を生み出します。
群馬県農業技術センター
2012年竣工
意匠設計:SALHAUS(安原幹,日野雅司,栃澤麻利)
構造設計:佐藤淳構造設計事務所
延床面積:2400 m2
階数:地上2階
メッシュ状(格子膜状)の木造屋根をテントのように張った構造。
この構造は主に、
・3本の鉄骨支柱
・その間に張られた木造屋根
・端部を引っ張るテンションロッド
で構成されている。
屋根は、スギ(E50)90 x 75 mm @ 450 mm を2段に並べている。
木部材は、重量によって少し垂れた状態で張られる。曲げ強度よりも引張強度が勝る材料でできた、やや硬い材では、張力を与えてたわみ(変形)を減らしたほうが大きな荷重に耐えられる。
また、膜構造に比べ、硬い材を張っていることは風による上下のバタつき(フラッター)を抑える効果も期待できる。
単純梁:曲げモーメントのみが発生する。
張力を与えるとたわみが減る。
参考:針金にオモリを吊るし、端部がスライドするように置いてあると折れてしまうが、両端をしっかり持っていると折れずにぶら下がる。
垂れた形状は幾何学的非線形解析により求めている。(Newton-Raphson法)
詳細な解析モデル
木造はクリープ現象,メカノソープティブ現象による変形の進行に配慮する必要がある。
そこで、1年3ヶ月に渡り、4mの材を引っ張り続ける試験を行った。
引張試験の様子。4mの材に3tfの張力を与え続けた。
気温,湿度の変動
木材の含水率の変動:
23〜8%で変動した。
木材の伸び
木部材端部詳細図
初期変形後の伸びは2mm程度となった。
年間の伸びは年を経るに従って落ち着いてくること、張力が実際には1〜2tfであること、を考慮して年間1mmと考えると、長さ20mの材では年間5mm、10年で50mmとなる。
そこで材端に100mmのクリアランスを設ければ充分と考え、将来の締め直しが可能な納まりにしている。
なお地震時には、
梁間方向ではテンションロッド,鉄骨ラーメン
桁行方向では鉄骨ラーメン,木部材による水平ブレース
が主な耐震要素となっている。
張力を与え、材1本で20mを架け渡す試験の様子。
計画 :2017年
計画地 :岩手県
意匠設計:SALHAUS(安原幹,日野雅司,栃澤麻利)
構造設計:佐藤淳構造設計事務所
「高田東中学校」,建築家:SALHAUS
積雪荷重ぶんをロッドであらかじめ引き下ろしておくと、積雪荷重でのたわみが極めて小さい。
「ベンディングアクティブ」の性質を活用している。
竣工 :2016年
建築家:原田真宏,原田麻魚/MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO
構造 :佐藤淳構造設計事務所
延床面積:744.70 m2
知立の寺子屋
https://www.fuji-studio.jp/
木材を交互に並べ、長ボルトで縫う、これを繰り返して鎖帷子のような柔らかな懸垂面を形成する。
長さ1500mm,厚さ105mmで統一し、幅を65.9〜220.6mmと変化させて、扇形に幅が広がってゆく平面形に常に同一の数の材を並べている。
屋根伏図
軸組図
木造屋根を支持する躯体は鉄骨造としている。懸垂屋根の頂点を支持する柱には両側からの張力がバランスするので大きな応力は生じない。端部で強く引っ張られるのに対してはブレース付きのラーメンで抵抗している。
● 非線形解析
平面が対称形でないために、懸垂した形状はやや複雑な曲面を描く。放物線からスタートして、垂れて落ち着く形状を求める非線形解析を行なった。解析モデル図で、屋根の中央で奥部のほうが手前よりもたわんでいる。
担当スタッフにより作成された、Newton Raphson法の一種であるCo-rotation法を改良したアルゴリズムの非線形解析プログラムによる。
非線形解析結果
解析モデルの屋根は、単純な格子にモデル化している
● 長期解析,地震時解析
上記で求めた形状に対して長期荷重を加えた場合の非線形解析を行なう。
ここではファサードのマリオン柱が圧縮に耐えられるものとしたので、各区画の屋根の中央部がたわむ。
初期たわみの最大が1.8cm程度と算出されたので、クリープ、メカノソープティブ、積雪荷重が常時は載らないこと、を考慮して、木材を置き並べるための定規の高さで3cmのむくりを与えた。実際のたわみが4cm程度発生しても、目標位置から1cmの下がりであれば問題ない。現場でジャッキダウンしたところ2cm程度下がり、積雪がないことを考えると予想よりやや多めだったが、異常なほどではないと考えられる。
地震時には各区画の屋根の中央部が膨れるように揺れるが、大きな変形ではない。
長期解析結果:変形図,50倍表示
地震時解析結果:変形図,50倍表示
● シアーコネクター部のモデル化
木材同士の接触部には長ボルトを2本ずつ通して、その孔部にシアーコネクターとしてスプリットリングを仕込んでいる。
完全なピン接合でなく、少し剛性を持たせ、風に対するフラッタリングが起きにくいようにしている。
この部分を考慮して、シアーコネクターの「アソビ」と「めり込み」から等価剛性を求めたところ、木材の断面2次モーメントを0.3〜0.5倍にすることに相当することが分かった。そこで、解析モデルでは全て0.3倍としている。
● 木材の加工
扇形に広がってゆく木材が懸垂形に並ぶと、角部で面が合わないため、長ボルトでの締め付けが効かなくなる。接触面を確保しながら、設計時の想定よりも加工しやすい形状が、施工者から提案していただけた。
33段目の31列の木材の形状図
ひとつの木材は、この図で右隣の木材との干渉部(水色部)を削る。
全ての木材について、このような図を描いていただくことができた。
木構造
山鹿小学校
計画 :2013年
計画地:熊本県
建築家:工藤和美+堀場弘/シーラカンスK&H
構造 :佐藤淳構造設計事務所
小径材で形成する「南京無双玉簾状」の架構です。
小径で短い材を、角度を少しずつ変えながら連ねてゆくと南京無双玉簾を扇状に広げたような架構が形成されます。
全体が大きなデプスのラチス状になり、下縁が滑らかな曲線を描いてこれがアーチとして効いています。
各棟とも基本的に屋根以外の構造はRCとし、木造屋根を載せ、部分的に木造屋根の途中を支持するために木造架構の脚を下ろしています。
The large span structure composed of slender timbers to have a shape of Nanjing MusoTamasudare.
Timber configuration is optimized to generate arch effect as well as lattice effect.
Nanjing MusoTamasudare
南京無双玉簾
Branching joinery / Tenon / Gymnasium
Specific mortise and tenon could be developed for this joinery.
様々な角度で接合する材端には脱落しないような凸型のホゾを設けており、これが山鹿の大工により素晴らしい精度で刻まれ、組立てられました。
基本的に4m材、6m材で構成するようにしていますが、地元の山でストックヤードの職人に聞くと、「八寸角(240mm)」ぐらいなら10mぐらいの材は難なく採れるよと言います。これを聞いて、体育館に240mm角で7m程度の材をふんだんに用いることができました。
Tamasudare pattern could be adjusted to span, shape and boundary condition of each room.
Dimensions of the timber could be 105mm, 150mm, 240mm respectively.
教室、図書館、体育館など、スパンによって部材のサイズを105mm角、150mm角、240mm角の製材として使い分け、また支持点の異なる条件によって玉簾の模様を適応させています。
下縁が描く曲線によって、うまく下弦の軸力を伝達できるかが決まります。
「宮野森小学校」建築技術2017年5月号より
大空間になるほど、それを木造で構成することに心配を抱く声が聞かれる。木造の設計式は、どれが優勢とも決め難いようなので、常に数多くの現象を想定して強度を確認しなければならない。それだけの欠点があるということでもあり、解説を読んでいると途方に暮れる。
それでも回を重ねる毎に、そういう欠点は発生するもので必ずしも回避しないといけないものでもないと考えていれば、そう過剰に神経質になるものでもないなと感じる。
(1) 割れ:材の中央に材軸方向に断続的に走る割れは避けられないものと考える。ドリフトピンを挿した列に入る割れは厳しいので、施工の早い段階で可能なら取り替えるが、厳しい時はエポキシ樹脂を注入する。
(2) 緩み:収縮して接合部が緩むことは考えておく。ボルトは将来締め直す、ドリフトピンは緩みにくいが緩んでも脱落しない方向にしておく。隙間ができたら埋木を挿入する。
(3) 腐食:どんなに腐食対策をしても腐らない前提で考えてはいけない。将来の材の取り替え方法を考えておく。継手がドリフトピン接合であればシンプルで、限られた範囲を簡単に外すことができる。
(4) クリープ:変形が大きくなる部分はムクっておく。ムクらなかったときに撓みが大きいと問題になるが、ムクりが足りなくてマイナスになっても予想はして対策していたということでそう問題にはならない。
(5) 調達:どんな寸法の木材がどれだけの材積使えるのか、伐採現場の職人や大工など山に近い人々に聞くと使える材の豊富さを知るときもある。でもそれがいつもではないから、それほど特徴的な材が入手できないときは、むしろその状況を特徴と捕らえる。
(6) 応力伝達:斜め材の応力をいったん柱に伝えてから梁の応力と釣り合わせるといった伝達に注意する。滑る方向のせん断力の伝達が複雑な場合もある。
モデル化
こうして見てみると、最後の「応力伝達」は神経を使うものの、他はそう恐れるものでもないことが感じられるのではないかと思う。大規模木造の可能性を広げる認識として役立てばと思う。
計画 :2018年
計画地 :岩手県
意匠設計:SALHAUS(安原幹,日野雅司,栃澤麻利)
構造設計:佐藤淳構造設計事務所
過大に見えるぐらい貫の背を大きくし、込栓をいくつも打ち込む。剛強にした貫接合はラーメンとフィーレンディールを形成することができる。
貫接合は材料効率の良い接合ではないものの、未だ魅力は尽きない。太めの柱に極端に細幅の梁、という古き良きプロポーションが独特でもあり、クサビで締める簡素な仕組みが素朴に見える。技巧的な木組み形状の刻みではないものの、加工精度の高さとクサビによってスリップの少ない半剛接合が実現される。
2段,4段の貫を駆使した貫式ラーメン構造
木材は、スギの製材でも比較的太いものが入手できそうとの情報があった。柱として270mm角なら製材で可能、300mm角だと少々厳しいが集成材(スギ集成材E65-F225)なら難なく使える、という状況だった。貫背は300mmぐらいなら製材で可能、集成材(カラマツ集成材E95-F270)なら360mmが使えるという。それだけ太い製材が使えるなら製材だけでやってみようと試算してみたところ、貫は概ね2〜3段、ところどころ6段でほとんど壁のようにする、といった具合と分かった。プロポーザル段階ではそのように製材で提案していたが、この地域は集成材も生産しているので最終的には集成材を使用して材数を減らすことにした。
貫は360mmで概ね2〜4段程度となり、全体的な透明感も増した架構となった。
抜群の精度で貫を挿入し、クサビで締め、込栓を6本打ち込む
クサビにはケヤキ、込栓にはカシを使う。
収縮でクサビが緩んだら打ち込み直す
このラーメン構造が水平力に抵抗するとき、貫が回転して柱が貫にめり込む。上下のめり込み位置が離れているほど曲げモーメントが大きいので、貫の背が大きいほど強い。そこで極端に背の大きなものが使えないかと考え、入手しやすい内で大きな360mmを使うことにした。
込栓は太さ30mmを6本打ち込める。そうして剛強にしても足りないぶんは必要な段数を重ねればよい。
柱脚金物
仕口部の曲げ試験,荷重変形関係
柱=300x300,貫=120x360,込栓あり,実験/予測
柱=300x300,貫=105x360,込栓あり/込栓なし
貫と込栓の合算が可能なことを確認
「通し貫接合」も、「込栓」も、日本建築学会の「木質構造接合部設計マニュアル」で剛性と耐力の式が提案されているので、それらを適用する。ただし、合算する手法は記載されていない。貫も込栓もどちらも繊維直交方向にめり込む変形を利用しており堅さの差が少ないので効くタイミングが似ているだろうと思われるのと、めり込みの発生位置が異なるので、あまり疑問なく合算できるのでは、と思いつつ、確認してみたいと思い実大実験を行うことにした。
柱を300mm角のスギ集成材に統一し、貫は105mmx360mmと120x360mmのカラマツ集成材の2種類とした。貫が105x360mmのほうで、「込栓あり」と「込栓なし」を試してみた。なお、実験では込栓を角棒30x30mmとしているが、現場では丸棒φ30mmとしている。
ここで、試験体をそれぞれ2体ずつとしている。試験体を3体でなく2体でよいと判断できることは実験のし易さを格段に高める。上記のように試験体の種類は3種類となったが、それで試験体数が合計6体で済むか、9体必要かは随分印象が異なる。
貫が大きい120x360mm場合の破壊状況と、荷重変形関係を見ると、破壊は十分に変形した後に、柱が込栓の位置で縦に裂けるように発生したことが分かる。105x360mmの場合には梁のほうが裂ける破壊モードだったので、柱の欠損具合がちょうど破壊モードが変わる寸法だったと分かった。いずれにしても十分に変形した後の破壊なので問題ないものと判断した。
通し貫接合による降伏耐力は荷重に換算して24.5kN、込栓の降伏耐力は荷重に換算して4.7kNと算出される。回転剛性も共に算出され、通し貫接合の降伏が先行すると考えるとグラフの第2折れ点までが決まる。
最大耐力は、「木質構造接合部設計マニュアル」で提案されているように、通し貫接合は降伏の1.5倍に上昇すると考え、剛性は初期剛性の1/10に低下すると考えた。ただし込栓による耐力は上昇しないものとしてみた。
以上の結果描かれたグラフは、降伏時の変形がやや少ないものの、概ね実験値の安全側を描いていると見られる。従って、「通し貫接合」と「込栓」の耐力は単純に合算してよいものと考えた。
なお、「込栓あり」「込栓なし」の違いによる耐力の違いは実験で明確に見ることができる。
車庫のフィーレンディール,ムクるためにスパン端部に生じる目違い
縦材のピッチを細かくし、4段貫にするとフィーレンディールでスパン13.65mの車庫の屋根も架け渡すことができる。クリープ対策で中央を4cmむくっておいたらジャッキダウンでちょうど4cmたわんだ。今後さらに変形が進行しても6cm程度に落ち着くと想像している。
「現場実習」
この現場の最中、ドイツからインターンシップで来ていた学生が、ドイツでは半年間ほど現場経験をするインターンシップがあるという。日本ではできませんかと聞くので、保険などの関係で難しいのではと思いつつこの現場にお願いしてみたら、ふたつ返事でご了解いただけた。結局2日間ほど日本の大工仕事を体験して、大変喜んで帰国していった。これは留学生に限らずもっと試みられると、学生にも現場にも双方によい効果があるように感じた。
Architect: Akiko Takahashi, Hiroshi Takahashi / Workstation
Structure: Jun Sato
Woven-like interlocked thin laminated timber structure inspired by bamboo baskets.
The timber bands can be woven in various directions and the members follow a geodesic line of surface.
芦北町立佐敷小学校
竣工 :2006年
建築家:楠山設計+石井ひろみ/Architerrace
構造 :佐藤淳構造設計事務所
スギの「丸太」を構造に使用した2階建て校舎。管理棟の多目的ホールには木造ドーム屋根が架けられている。
柱は2mピッチで林立し、欄間の部分を利用したラチス状の梁とともに「ラーメン構造」を形成する。
これによって校庭や廊下に面する壁面にブレースや壁など耐震要素が必要なく、開放的にすることができる。
Cedar log columns and lattice beams are composed into rahmen structure.
全体模型,内観,多目的ホール屋根
山を調査し、結局この計画では「E70 = 60 〜 80 tf/cm2」を指定している。径は元口 350 mmを指定し、末口や階高程度の高さごとに径を指定している。最大 10.5 m という長い材を使用することができた。
伐採,皮むき,自然乾燥,半固定柱脚の実験
木材の調達は着工の半年以上前、設計途中から段取りを始めなければならない。
「伐採」→「葉枯らし」→「皮むき」→「乾燥」→「刻み」→「建方」
の工程を経る。
この計画では、未だ十分な乾燥期間を確保できなかったものの、全体工事の入札よりも前に木材を調達することができた稀有な例となった。
教室の境界の壁にはブレースを設け、半径方向の耐震要素としている。
教室棟の構造伏図,軸組図,接合部詳細図
Architect: Junya Ishigami
Structure: Jun Sato
Excavated ground is useful for free-form formwork.
When the soil could be removed after the concrete could be hardened, the caved space could be revealed.
Maison Owl – House & Restaurant
https://www.pen-online.jp/article/011800.html
Excavated ground and rebar works
Design & Construction: Yusuke Obuchi Lab, the University of Tokyo
Structural Adviser: Jun Sato Lab
Masonry structure composed of ellipse shaped bricks.
The bricks are cast using cone shaped moulds. The moulds were soft enough to be deformed, so different ellipses could be generated from the same mould.
Ellipse packing is a very complicated geometric problem which is solved by finding the solution of simultaneous quartic equations. These are developed using the conditions that the length of circumference must be identical and every adjacent 2 ellipses should have single intersection. Here we proposed an approximate solution.
薄い材料の円錐台の型で作った楕円ブロックを積層する。同じ型でも押し潰し具合によって異なる楕円ブロックを作ることができ、これを並べて曲面を形成する。目標の曲面を作るためにどんな楕円を作ればよいか知る必要がある。
自由曲面の楕円充填問題を解く。
「楕円の周長一定」
「楕円同士の交点の数=1」
の条件のもと、4次方程式を構築する。4次方程式の解の公式では解けない式になり、難解だと分かったが、近似式を解くことはできた。
Not every global shape can be composed. This limitation should be considered as a characteristic of this system.
Another estimation other than those mentioned above will be the compression state, which necessitates that the final shape should be developed with no tension arising.
In this case a feedback operation is complicated to compose, but as we could develop an approximate algorithm of the relationship between the local state and the target curvature of the global shape, we could develop the growth , feedback and iteration processes.
Collaboration with Obuchi Lab (G30 Digital Fabrication Laboratory)
Tensegrity structure composed of X shaped components work as compression element and cables work as tension element.
計画 :東京大学小渕祐介研究室 (G30 Program)
構造協力:東京大学佐藤淳研究室
X形のコンポーネント(圧縮材)をケーブルでつなぎ、ドーム状に膨らませると互いのギャップによってデプスが生まれ、ケーブルがピンと張られる。圧縮材同士が接触しない、「テンセグリティ」の一種。
Geometric non-linear analysis is necessary for this structure because it stabilizes after large deformation such as 47 cm at its center.
曲率が増し、張力が十分発揮されるまでの過程は大変形問題となり、幾何学的非線形解析が必要となる。中央の変形予想は47cmとなった。
極端に剛性の異なる部材が混在する場合の非線形解析は収束しにくい。この解析により、φ3mmのケーブルがピンと張ると概ねφ6mmの丸鋼と同等の硬さの部材と解釈すれば計算が収束しやすく、収束回数が少なく済むことが分かった。コンポーネントに発生する圧縮は 0.4 tf 程度、ケーブルに発生する張力は 0.3 tf 程度。
Compression test for a X shaped component, Tensile test for a cable joint
The X shaped component consists of 3 stainless steel plate of 0.3 + 0.8 + 0.3mm thick.
Ultimate compression strength of this component has found 0.41 tf.
コンポーネントの圧縮試験は 200 tf 試験機を使用、ケーブルの引張試験はテコを応用してバネ秤で載荷した。
圧縮試験で得られた最大荷重は例えば 0.41 tf など。
これを再現できるよう解析モデルの設定を調整する。板厚は実際と同じ 0.3 + 0.8 + 0.3 mm とし、部材幅を 40 mm と設定すれば座屈荷重が 0.29 tf となり、概ね再現しながら少し安全側の算定ができることが分かった。
Once it is found possible to use 40mm wide elements for these grid model, we can find the strength of other options only by the analysis without loading tests.
モデル化の方針が分かれば他の形状の強度や、強度不足のコンポーネントの対処法も解析のみで見つけることができる。板厚を 0.5 + 1.2 + 0.5 mm とすれば座屈荷重が 0.758 tf となり十分なことなどが分かる。
紡錘形は座屈に有利な形状であり、3枚の厚さを合計した1枚板程度の剛性が発揮できることも分かった。
これだけ準備して臨んでも、現場では数々の問題が起きる。
吊り上げの最中にコンポーネントが曲がり、コンポーネントが膨らみきっていないものも見つかり、ケーブルの張りがあまいのも見つかる。その場にある材料で今どんな対処が可能か、瞬時の判断が必要となる。こういうときの職人たちは頼もしい。
Construction
分からないことだらけの中、限られた時間の中で何を検証すればそれが建つと分かるか、極めて単純なモデルを頭に浮かべてそれを見極める、構造エンジニアの技を試行する良い機会となった。
この形態では、曲率とコンポーネントの大きさによってデプスをコントロールすることが、曲面の強度をコントロールすることになる。その関係からどのような曲面が生み出せるか追究することにも応用できる。
Obuchi Lab, G30 Digital Fabrication Laboratory
Sticks are connected in simple way just touching. But they have the parameter of 3D angle and connection point, which makes the geometry complicated.
To make the problem simple, poured sticks are interpreted as the porous volume material.
計画 :東京大学小渕祐介研究室 (G30 Program)
構造協力:東京大学佐藤淳研究室
Zoom out from detail
Finally the way of calculation was found different from Sunny Hills, structure of complicated Kigumi joint.
Sunny Hills Japan, 2013, Architect : Kengo Kuma
Structural analysis model for Sunny Hills, composed with every timbers modeled into bar elements.
Compression Test
Left : Initial 3 specimens
Middle : Improved 2, provided 2 by Shimizu Co.
Specific Gravity ρ= 0.06 tf/m3
Young’s Modulus E = 1.0 kgf/cm2
Yield Stress σy = 0.108 kgf/cm2
Bending Test
Specific Gravity ρ= 0.04 tf/m3
Young’s Modulus E = 0.6 kgf/cm2
Yield Stress σy = 0.209 kgf/cm2
Representing values for structural analysis :
|
Specific Gravity |
Young’s Modulus |
Yield Stress |
|
[tf/m3] |
[kgf/cm2] |
[kgf/cm2] |
Urethane Sponge |
0.300 |
0.4 |
- |
Poured sticks |
0.060 |
1 |
0.108 |
Styrene foam |
0.013 |
80 |
1 |
Balsa wood |
0.140 |
40000 |
160 |
Cedar wood |
0.380 |
80000 |
400 |
Steel |
7.800 |
2100000 |
5000 |
Even the material was found soft and weak, still we can use it for structure with thick volume.
Structural analysis for the mock up, gravity and wind speed 10 m/sec loaded.
Operated by Mika Araki, Jun Sato Lab
Structural analysis for the mock up, gravity and wind speed 20 m/sec loaded.
Red elements indicating the lack of strength.
Operated by Mika Araki, Jun Sato Lab
Structural analysis and Optimization progress for final shape.
Operated by Mika Araki
Interface for adjustment of Karamba+Grasshopper to Hogan
Developed by Masaaki Miki
Stainless cables inserted in the wall for extra safety.
They work as tension rings.
3次元テンセグリティ / 飛び出す絵本
圧縮材同士が接触しない構造。広義には自転車の車輪状のものも含められる。
圧縮棒と引張のケーブル材で構成され、圧縮材同士が接触しない構造。広義に圧縮材同士が接触しない構造全般を指し、自転車の車輪のようなものも含まれる場合がある。
Kenneth Snelson,Buckminster Fuller により広められた。
模型製作ですら困難極める。成長させる(圧縮材を追加する)手法が重要。
圧縮材をより自由な形状とする、引張材を膜にする、など多様なバリエーションが考案できる。
安定次数による分析、群論を用いた対称性の分析、接続状態を行列表示することによる解析法、軸ひずみに着目して安定状態を求める解析法、など研究されている。
3D Tensegrity → Experiments on Geometries and Dynamics : workshop at Stanford University
Lecturers
Beverly Choe, Architect, BACH architects / Stanford University
Jun Sato, Structural Engineer, Jun Sato Structural Engineers / University of Tokyo
Pop Up Structure and 3-dimensional Tensegrity Structure were studied in 2 days and constructed in 2 days.
スタンフォード大学でのワークショップ
2014年,スタンフォード大学でのワークショップ
材料とカテゴリーをこちらから提案し、2月の2日間で形状のスタディを行い、5月の2日間で構築した。
Category 1, Tensegrity Volume : Tensegrity to have 3D volume.
3D Tensegrity Volume composed of 18 galvanized bars and lengths of stainless cables (Photo by Nick Xu)
Tensegrity model, Pop-up Tectonics model
テンセグリティに3次元の広がりを持たせる試み
飛び出す絵本のように折りたためる構造の試み
Dimensionality of Tensegrity
It is hard for a basic tensegrity to find a stable shape as a “3 dimensional” volume with not a modular system.
テンセグリティの空間的な「次元」
1次元的なタワー状のもの、2次元的なドーム状のものなど提案されている。
3次元的なボリュームを持たせるには、さらに困難極める。
Category 2, Pop-up Tectonics: Foldable structure like a pop-up book, composed of 22 panels made of washi, traditional Japanese paper, and timber frames.
Washi paper provided by Takeo Co., Ltd.
Echizen Washi production: Shimizu Washi Co., Ltd.
Raising process of Pop-Up Tectonics,
(Top right, bottom left: photo by Nick Xu)
(Top left, bottom right: photo by Jun Sato)
It is hard to find an exactly foldable shape when using thick plates.
Extensions of sides should cross at the same focus point.
Panels belonging to the same layer should not be overlapped when they are folded down and the total angle of the sets of panels, which coupled, should be same.
Geometrical conditions can be recognized by studying the model.
For example, from the top view, a ridge line or thalweg line should be seen to lie on a straight line.
When the loop is connected, panels have twisted shape like a Mobius loop and it is hard to find the focus point.
Pop-up Stained Glass using brass frames, Workshop 2012, Jun Sato Lab, The University of Tokyo
Rigid Origami: deployable geometry composed of rigid thick panels
「飛び出す絵本」構造のステンドグラス風のインスタレーション
可展面のコントロール法
面の伸縮なく展開できる「可展面」のコントロール法の研究を開始。
まず、可展面を一意に決定するためのパラメーターを探った。
Venezia Biennale 2018 のための帯状のガラスインスタレーションの提案
数種類に限定した形状を連ねて複雑なリボン状の形態を構成する
GA gallery 展覧会出展。
Seminar at Keio University, 2006
Free form shell structure composed of 19x140mm timbers. Each element is leaning on another element, mutally continuing. This system is called lamellendach or reciprocal system.
森の休憩所, 2006年, 慶應義塾大学大学院生
19×140mmのツーバイ材が、互いに載せあいながら次々とバランスして広がり、大きな空間を架け渡す。
もとはラメラ架構(Lamellendach)と呼ばれるシステムからの発想であったが、学生たちによって様々な格子のパターンと起伏の自由度が検討された結果、このような三角形と六角形が連なる模様に至った。
細かな材が並んだ状態をラメラ(Lamella, Lamellen)と呼び、短い材がお互いに支えあうことで成立するという意図からも、これはラメラ架構の一種と言える。
ワークショップスケールでの実践
小規模構築物を設計施工するワークショップは「設計法」の構築を短期間で体感する良い機会となっている。
限られた時間と費用の中で決断しなければならないエンジニアリングの手法を学ぶ場ともなっている。
「壊れても死なない構造」の追求にもなっている。
Using local materials, 4 teams constructed pavilions of 4 to 8 m spans, in 2 days.
State of the Community 2016 / CITIZENS, COMMUNITIES and MULTILAYERED IDENTITIES, Dhillon Marty Foundation
Jun Sato Lab, University of Tokyo
Marc Dilet and students, Ecole Nationale Superieure d’Architecture Paris - Val de Seine
French Braid Tectonic, Workshop in the State of Community 2016 conference
The copper wire, with a diameter of 3mm, was braided to form French Braid Hair.
Metal wires are useful to compose quite ductile structure. Even in the event of collapse, it won’t fall down suddenly, rather shows a soft landing, because of the ductility.
Referring to a following Nebuta Tectonic project, when the slight wires are composed into 3-dimensional framework, the buckling length can be reduced and reinforced. In this case Washi paper works as tensile bracing.
Nebuta Tectonic: Steel wire + Washi paper, Jun Sato studio 2015 (Photo: Ying Xu)
Traditional Pampas grass braiding, metal wire braiding in Okinawa, Japan
Gecko and Cicada produced by wire artist Hironori Hashi
沖縄に伝わる草編み
針金アーティスト橋寛憲氏の作品
http://hashishiki.jugem.jp/?eid=1171
http://www.maruei.ne.jp/art-club/2010/08/post_220.html
Metal wires are also useful for developing fastener pieces. It is easy to develop the shape of interlocking, slotting, hooking or bouncing as following images.
Carbon Cable Pavilion for the Housevision Exhibition 2016, Architect: Kengo Kuma
Custom formed pad and fastener
French braid form tells how to compose bunches and how to cross at many points for metal wires to become structural elements.
French braid formed wires, Samples of braiding tecnique
Even though copper is weaker than steel, it is one of the materials which we can enjoy the aged surface turned into dark brown or green. Copper has enough ductility, which means ability to deform, and absorb energy due to the loads.
Overall form resulted in a ellipse dome composed of mingling arches.
Dimensions of the dome part of the pavilion : 3m long×2m wide×1.5m high
Design & Build: Naomi Sakuragi + Postgraduates of the University of Tokyo
Booth composed of dimpled acrylic resin walls. Thin plate wall comes 4 to 6 times stronger when dimpled.
愛知万博2005展示ブース : 2005年,建築家=櫻木直美+東京大学大学院生
水をバイオで浄化する団体の展示ブース。
厚さ3mmのアクリル板をランダムな水玉状に凸凹させた壁を構造としている。
薄板を、水玉状に凸凹させると、4〜6倍の強度を発揮する。
アクリルの溶融温度が低いことを利用して、バーナーで加熱し、中華ナベを押し付けるという方法で製作した。
壁を屏風状に立てることにより、さらに強度を増している。
Dimpled acrylic resin wall, Forming process using Chinese pan
Physical model made of aluminum, Buckling analysis
アルミ板で作った強度試験用模型,座屈解析
パルプモールド : 東京理科大学大学院講義, 2010年
紙を水に溶き、鋳型で成形する。軽量で自由な形状が可能。
繊維同士が水素結合のみで接合されているため、水に浸すと分離し、再利用できる。
高さ1.8mの「シェルター」, 窓枠に取り付けられる「障子」
ENSA Paris Val de Seine とのワークショップ
世界最薄+最軽量の布「天女の羽衣 Super Organza」の膜をラタンの骨組で突っ張って安定させる構造の提案
フランスの建築教育では、オーガニックな素材を使うことを重視している。
半透明な色が折り重なる風景
生み出されるナチュラルさを「2次元スペクトル」で分析する予定
東京大学小渕研究室(G30)への協力
この形態の検討のために、
Rhinoceros + Grasshopper → Hogan (Released by Jun Sato)
という順で自動実行される形態解析ソフトウェアのコンポーネントを構築。
カーボンケーブル(CFRP ケーブル)による繭のようなドーム構造の提案。
「優秀賞」を受賞。
「ゆらぐフレーム」, 考案:隈 太一 + 澁谷 達典,協力:佐藤研究室学生一同
写真:https://www.aij.or.jp/jpn/symposium/2015/sss2015photo.pdf
建築設計系の雑誌「GA JAPAN」主催の展覧会。
Leoflex を使ったガラス構造の部分モックアップ、Venezia Biennale 2016 のための可展面のスタディ模型を出展。
Leoflex による構造モックアップ
比重 density / unit weight (ρ)
剛性 stiffness (K),ヤング係数(ヤング率,弾性率)Young’s modulus (E)
ポアソン比 Poisson’s ratio (ν)
弾性 elastic,塑性 plastic,粘弾性 viscoelastic
降伏 yield
強度(引張,圧縮,曲げ,せん断)strength (tensile, compression, bending, shear)
終局強度 ultimate stress
線形 linear,非線形 nonlinear
伸び性能 ability of elongation,延性 ductility,靱性 toughness,脆性 brittleness
線膨張係数 linear expansion coefficient
鋼材 SS400 の引張試験
Tensile Test of Steel SS400
Typical Load-Displacement Curve ガラス板(普通強度)の曲げ試験
塑性域が全く存在しない
Bending Test of Glass Plate
Glass has no ductility
断面積 Area A [cm2]
断面2次モーメント Moment Inertia I [cm4]
ねじり定数 St. Venant’s Torsion Factor J [cm4]
断面係数 Section Modulus Z [cm3]
Example of rectangular section B x D
A = BD
I = BD3/12
Z = BD2/6
基本公式
実験結果によって、材料強度、ヤング率、相当する断面性能(断面係数Z,断面2次モーメントIなど)、座屈長さ、など算出する。
これらの式は、架構を単純化したモデルをイメージして計算するときにも役立つ。
Basic formulae
These formulae will be also used for simplified calculations, understanding structural test, etc.
・バネの荷重と変形 Load – Displacement on spring
F = k x
where
F : 荷重 force (load)
k : バネ定数 factor (stiffness) of spring
x : 変位 displacement
・弾性曲げモーメント Bending moment in elastic level
M = σ Ze
where
M : 曲げモーメント bending moment
σ : 縁部の応力度 stress on edge
Ze : 断面係数 elastic section modulus, for rectangle section Ze = BD2/6
・全塑性モーメント Bending moment in plastic hinge level (ultimate level)
Mp = σy Zp
where
Mp : 全塑性モーメント plastic hinge bending moment
σy : 降伏応力度 yield stress
Zp : 塑性断面係数 plastic section modulus, for rectangle section Zp = BD2/4
・集中荷重を受ける単純梁 Simple beam with concentrated load
bending moment displacement
・等分布荷重を受ける単純梁 Simple beam with uniform distribution load
bending moment displacement
・等分布荷重を受ける両端固定梁 Fixed beam with uniform distribution load
bending moment displacement
・集中荷重を受ける片持梁 Cantilever beam with concentrated load
bending moment displacement
・等分布荷重を受ける片持梁 Cantilever beam with uniform distribution load
bending moment displacement
・オイラー座屈荷重 Euler’s Buckling Load
fix-fix fix-hinge hinge-hinge fix-fix+sway fix-hinge+sway
α=0.5 α=0.708 α=1.0 α=1.0 α=2.0
Buckling strength : Pcr =
E : Young’s modulus [tf/cm2]
I : Moment inertia of section [cm4]
Lk : Buckling length Lk =αL
・アーチの形状 Arch Shape
等分布荷重に対しては放物線を描く Parabola for uniform distribution load
自重に対してはカテナリーを描く Catenary for self-weight load
・アーチの略算 approximate calculation
Approximate Buckling Length Lk = 0.4 〜 0.5 L
放物線 で近似する。
αは、スパン L と高さ H により、 で求められる
傾きは微分して、 なので、端部での傾きは、1.0 :
= 1.0 :
となる。
鉛直荷重を w [単位 tf/m など] とすると、支点の鉛直反力
端部の軸力 N は、傾き方向なので、
これに対し、アーチの座屈荷重は、座屈長さを 0.4 L などとしてオイラー座屈の式に代入して求める。
架構全体の構造解析の基本手順
(1) 材料と形状の想定 Assumption of Material Property, Shape of Members and Shape of Frame
(2) 荷重の想定 Decision of Loads as its Type and Level
Load Type: Gravity, Earthquake, Wind, Temperature
Load Level: Elastic / Ultimate
建物に加わる様々な荷重の例
Diagram of diverse loads
荷重 Concerning Load
重力 Gravity : 重力加速度 1G = 980 cm/sec2
静止している人 Stationary person = 80 kgf
階段を降りる人 Person descending stairs = 200 kgf
地震荷重 Seismic Load : 振動を静的荷重に換算する方法がある。数十年に1度の地震で重量の 0.2 倍など。
Seismic vibration load considering a couple of decades in Tokyo can be interpreted to 0.2 of factor of weight.
風荷重 Wind load : 東京の建物では数十年に1度の風速(10分平均)として 34 m/sec を想定し概ね 100 kgf/m2 となる。
風圧力は風速の2乗に比例する。
数ヶ月では 20 〜 25 m/sec
数週間では 10 〜 15 m/sec
などと想定する。
Wind pressure considering a couple of decades in Tokyo can be estimated to be 100kgf/m2 due to the wind speed 34m/sec (10min. average speed).
Wind pressure is proportional to the square of wind speed.
20 〜 25 m/sec for several months
10 〜 15 m/sec for several weeks
(3) モデル化 Modeling for Analysis
Finite Element Method (FEM)
Element Type: Bar element (Wireframe), Plate element, Solid element
Joint Type: Rigid, Hinge (Pin), Half rigid (Spring)
(4) 構造解析 Calculation
Results: Deformation, Stress
Bending Stress Diagram, Deformation Diagram
(5) 強度のチェック(部材断面設計) Analysis of Stress
Basic Case
Safety Ratio = N/Na + M/Ma ≦ 1.0
N: axial force
M: bending moment
a: allowable
Structural analysis software HOGAN
Safety Ratio = M/Ma / (1.0 - N/Na) ≦ 1.0
最適化/形態解析/形態創生
全体最適化/局所最適化
多目的最適化/遂次最適化
座屈固有値問題の縮約
こもれび/2次元スペクトル解析
自由形状/Fuzzy Node/木組
パラメトリックデザイン/デジタルファブリケーション
大工の技
エンジニアリングは省略の技
壊れても死なない構造
月面基地/火星基地
Seminar at Norwegian University of Science and Technology NTNU
Kigumi Workshop at Universität für angewandte Kunst Wien, Die Angewandte
Workshop with ENSA Paris Val de Seine
Seminar at Stanford University
Transparent Structure as Perceptual Filter: Seminar and Workshop at Stanford University, USA, 2015
Experiments on Geometries and Dynamics: Stanford University, USA, 2014
Workshop at Harvard GSD
Seminar at SCI-Arc
Seminar at RISD
Workshop in Paris
Community Week 2014: Dhillon Marty Foundation International Workshop in Amritsar, Punjab, India, 2014
Workshop in Bangkok
Creative Structures: art4d Workshop in Bangkok, Thailand, 2012
November 4th + 5th 2019: Lecture on timber structure in Vietnam
March 21st + 22nd 2019: Lecture for Norwegian University of Science and Technology NTNU
October 16th 2018: Lecture for Universität für angewandte Kunst Wien, Die Angewandte
October 9th 2018: Lecture for ENSA Paris-Val de Seine
November 1st 2017: Lecture for SCI-Arc
October 27th, 2015: Lecture for Rhode Island School of Design RISD
October 26th, 2015: Lecture for Harvard GSD
April 30th, 2015: Archi-Neering Design AND in Nanjing
October 27th, 2014: Lecture for University of Oregon
September 19th, 2014: Keynote Speech for Smart Geometry in Hong Kong
MARK #54, Exacting Structures, Netherlands, 2015
Earth: Material for Design, National Museum of Emerging Science and Innovation, Japan, 2011
Items in Jun Sato Structural Engineers, LIXIL Publishing, Japan, 2010
GLASS BLOCK and ARCHITECTURE, Crystal Brick House, Alinea Editrice, Italy, 2010
Creating New Principles for 21st Century Architecture, LIXIL Publishing, Japan, 2009
Vivid Technology, Gakugei Publishing, Japan, 2007
Copyright © 2010 Jun Sato Laboratory